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トップ・レフト ウォール街の鷲を撃て (角川文庫)

黒木 亮
おすすめ度:★★★★★
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小説としての価値に止まらない良作
おすすめ度 ★★★★★

本書はいわゆる経済小説というジャンルにおいて非常に良作であると思う
一般の方たちには難解だと思われる国際金融の世界を人物の背景にまで目を配って上手く描ききっているのが印象的だ

ただ本書はこうした小説としての価値に止まらず、現実の金融業界、ひいては日本企業全体について考えさせられるものでもあると私は思う
一方の主人公である龍花という男の生き様は同情を禁じえないくらい入り込んでしまった
それは国内金融業界の器の狭さが生んだ悲劇のようなもので、現実にも十分有り得るものといえるからだろう
才能があり努力を人一倍する真に優秀な人間が外資に流れる背景がこの龍花という一人の男を通して克明に描かれている点が本書の中でとくに秀逸だと感じた
実は国内企業だの外資系だのと分類すること自体陳腐なことかもしれないが、それでも有能もしくは有能になりうる原石がとくに金融業界において外資に流れる背景には、外資が魅力的ということ以上に国内の金融機関に大きな欠陥がある証左だろう
本書を通じて考えさせられた次第である




個人投資家の「たまご」達へ
おすすめ度 ★★★★★

黒木氏はマネー誌「MONEY」のコラムを連載されていた時に知りました。この文庫では一部加筆された部分があり、不良債権処理で国内金融機関が疲弊していた1997年頃から2000年頃までの世界的金融・投資関連の動きが解かり易く、ストーリーに織り込んであります。株式投資やFXなど、これから自己責任の上に立って資産運用を考えている人には、登場人物達の「1億5000万ドル」が身近に思えるのでは。



国際金融ビジネス+エンターテインメント
おすすめ度 ★★★★★

読み始めは、難解な専門用語が目白押しで(説明はあるものの)、途中で読むのを断念しそうになった。
ところが、登場人物の性格や背景が描かれるにつれて、小説としてのめりこんでしまった。

主人公の一人である龍花が日本企業で味わった苦悩と屈辱、それをばねにして外資系企業で活躍する様は、日系企業に勤めたことがあるサラリーマンならばある程度は共感してしまうところだろう。

国際協調融資、TOBなどとっつきにくそうな内容が、実在しそうな個性ある登場人物たちによって非常にスピーディーで先の読めない良質なエンターテインメントになっているのに驚かされる。



バンカー(銀行屋)VS ブローカー(証券屋)
おすすめ度 ★★★★★

両主人公ともバンカーです。商業銀行と投資銀行(証券会社)の違いがありますが。顧客との安定的継続的関係を前提にし薄い薄い利ざやを長期に渡って獲得する「融資」を主要業務にする商業銀行と個別案件ごとにスキームを組み立て資金の出してと取り手を結びつけ、その都度厚いコミッションを獲得する投資銀行。金融市場という宗教、国家、人種、思想、伝統といった数値表現不能な、人間的で観念的なものからもっとも束縛を受けない「カネ」(=利益=数値表現可能な唯物的なもの)が価値のど真ん中に座る世界にいて、前者はそれでもそれらを背負いながら進み、後者はそれらを非情なまでに削ぎ落としひたすら利益(カネ)の最大化に突き進む。どちらがいい悪いではなく金融市場にはその2者が不可欠です。前者の価値観の最たる者が「信用」であり他者への「信用供与」が存在しなければ金融市場は存在せず、持つ者の信条思想、人種人格、国籍等あらゆる背景を問わない自由な「貨幣」が無くても金融は存在しません。その相反する価値観を背負った2人の男が凄まじい火花を散らして激突する欧州シンジゲートローンマーケット。皮肉なエンドの中に対立する両者が互いの価値観を認めていたことが垣間見れます。優勝劣敗、冷酷非情な国際金融を熱い人間たちが動かしている様を鮮やかに描き出した秀作。



テンポがいい
おすすめ度 ★★★★★

話はテンポがよく進みます。
TOB、パックマンディフェンス、ホワイトナイトなどライブドア対フジテレビの騒動のときに出てきた言葉が飛び交います。
巻末には国際金融用語集がついてきてお得な文庫本となっています。


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