最後の恋―つまり、自分史上最高の恋。 (新潮文庫)
題名に引かれて読みました。
最後の恋 つまり 自分史上最高の恋
女性作家8人が描く、ライトな感じ、カジュアルな感じの恋愛小説です。
場面設定、ストーリー展開などに、意外性・ユニークさがある恋の物語です。
題名から、切ない恋を想像していたので、意外でした。
沢村凛「スケジュール」 、谷村志穂「ヒトリシズカ」、角田光代「おかえりなさい」、柴田よしき「LAST LOVE」などが、印象に残っています。
軽い気持ちで読めてしまう、軽快な小説集です。
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余命 [DVD]
韓流9対邦画1という視聴バランスの私にとって,邦画の“難病物”ですから,主人公は死なず,お涙頂戴的な作品になるのだろうと思っていましたら,全く予想に反して,淡々とした日常生活が描かれているだけの作品でした。
しかし,その淡々とした中に生と死を見つめたテーマが隠されていて,お医者さんと乳癌という二つの緊張素材に“赤ちゃん”という緩和素材を見事に絡ませた感動作になっています。
松雪泰子さん(滴役)が,一見クールだけれど,実際には弱さ,脆さを抱えた女医役を好演していて,男の私が言うのも変ですが,滴が一人病室で涙しながら,赤ちゃんを抱き,授乳しているシーンは感動ものでした。
映像的には,百田家(主人公夫婦)のセットも,良い意味での生活感があり,インテリアの小物使いのセンスも良かったと思います。また,春の桜,緑の生い茂る夏,落葉の頃,白く降り積もった雪と,季節感の描き方も素晴らしかったです。この季節の動きが滴の体調の変化とリンクしていたようにも感じました。
癌を告知され,すでに手術で克服したと思っている私ですが,本作の10年後の再発には唸ってしまいました。しかし映画では,その辺りの後味の悪さを全く感じさせず,心が温かくなる作品に仕上げてくれています。
何より健康であること,家族と一緒にいられることの日常など,一見当たり前と思えることに対する尊さを再認識させられる秀作です。
レッスンズ (講談社文庫)
私は幸運にも、この本の出版後すぐに谷村志穂さんの講演を聞く機会がありました。そこで彼女はこう言っていました。「この本はお腹の中に子供がいたときにとても静かに書いた本です。本当は私は何が書きたいんだろう、と思って書きました」と。その言葉にとても興味を持ち読みました。帯のコピーの「わたしたち自分で強くなるしかないんだよ」が表しているように、自分と向き合う本でした。今、自分と向きあって葛藤している最中の自分にぴったりの本でした。とてもよかった。
レッスンズ
家庭教師と生徒という間柄ですが、繊細な心を持ち愛情に飢えているという点で二人は非常に似ています。自分を表現するのが下手で周りの人と上手く溶け込めないところも・・。
物を教えるという事は教える人をも成長させてしまうのだという事を知りました。リコという少女に強くなる事を教える事で、マリエもまた強くなったのだと思います。二人の少女の静かな成長の物語だと思いました。
スノーホワイト (光文社文庫)
長編小説の『海猫』や『余命』(共に映画化)などで知られる著者の最新刊。46歳という成熟した女性を主人公に、既記の作品らと同じく読みごたえのある長編小説が発表されました。
コンビニでアルバイトをする宗助は、まだ大学生。介護の仕事をしている美南子と出会い、やがて閉ざされた彼女の心へとまっすぐに熱を傾けてゆく。
しかし美南子は親子ほども歳の離れた宗助に対し素直に向き合うことができない。流産、離婚歴、<突然、シャッターを降ろされる>かのように突き放された記憶、様々な過去に自分を漂わせたまま浮上しないでいるようにも見える美南子。
宗助は言う。
<あなたは何か逃げているんだよ。本当はまだそんなにきれいで、素敵なのに>(帯のコピーにもなった一文)
美南子という人物がとる行動や決断には、様々な戸惑いや焦れを覚えつつも、同時にそれは、大人なら誰もが必要とする勇気に等しいことを気づかされます。
ありきたりな出会いに見えながら、そこにいる人たちにとってはかけがえのない瞬間になり得ることを、あるいは、最終的にそれを決めるのは自分自身の生き方であることを、すべての読者にきっと納得させてくれる作品であると言えるでしょう。
ひとことに「恋」といっても様々な形がある。すべての出会いが何かのきっかけであるという可能性を秘めている。そんなことを気づかせてくれる、大人の純愛小説です。
主人公・美南子の勇気に心打たれ、涙しました。そんな小説は、なかなか存在しないと思うのです。