インド鉄道紀行 (角川文庫)
1990年に出た単行本の文庫化。
1988年にインド各地の鉄道に乗り歩いた記録。翌年に再訪して乗り残した山岳鉄道に挑戦した話も合わせて収められている。再訪するほどインドの鉄道というのは魅力的らしい。
インドはイギリスの支配下にあったため、世界でも有数の鉄道大国となっている。となれば、宮脇氏が訪れないわけがない。全線完乗などはとても無理だが、デリー-カルカッタ間やデリー-ボンベイ間など、いくつかの主要な幹線を体験している。意外に(と言っては失礼かも知れないが)時刻には正確(というか目に余るほどの遅延にはならない)し、施設もきちんとしている。宮脇氏もいつものとおりに列車の旅を楽しんでいる。
しかし、れまでの旅とは明らかに違う点がある。それはインド人に振り回されっぱなしになる点である。寝台列車で隣合った人たち、駅で寝泊まりする人々、物乞い、死体。そうしたものに動揺を与えられ、しばしば筆が列車から離れがちになる。インドの圧倒的な異質さが宮脇氏にも影響を与えているのだ。そのあたりが面白い。
僕たちの「深夜特急」―香港→デリー→ロンドン120日間バスの旅
沢木耕太郎の「深夜特急」を,そのルート,ホテルまで忠実に再現して旅をしてみようという企画。
1997年出版のこの本は,香港返還前夜であり,アフガニスタンではタリバン政権ができた頃でもある,なかなか厳しい時期。
実際,著者もアフガニスタンを迂回せざるを得ず,その苦悩が読み取れたりもする。
タイトルだけ見ると安直な企画とも受け取れるが,旅自体は,ほとんどバスでの移動であり,体力的にも気力的にもきついと想像できる。
著者は,その持ち前の明るさでカバーしてくれており,沢木氏の本とは雰囲気はがらりと違うものの,大いに楽しめる。
2030年ごろにでも,もう一度チャレンジして欲しい企画。