親分はイエス様 [DVD]
ヤクザの男たちとキリスト教信仰との接点が意表をつく。単なるヤクザ映画かと思う冒頭の抗争場面のリアルさ。それが、韓国人妻の愛によって人生を新しくやり直すという感動の終結には泣かされる。事実がもたらす所以であろう。渡瀬恒彦の木原勇次よりも、奥田瑛二扮する島俊夫の人物像の方が良く描かれている。
てのひらのメモ (文春文庫)
夏樹 静子さんの作品は結構読んでいますが、この小説は今までの作品とは全く趣が違っていました。
小説と言うよりは裁判員制度のマニュアル本の様な内容です。
かなりわかりやすく描かれていて難しさはなかったです。
もし自分だったら有罪・無罪どちらを選ぶだろうかと考えさせられる本でした。
ただ小説として読んだ場合の面白さにはやや欠けている感じがしました。
第三の女 新装版 (光文社文庫)
日本人で初めてフランス犯罪小説大賞(ロマン・アバンチュール賞)を受賞したのが本作で
す。
パリ郊外のホテルで嵐の夜偶然出逢った日本人の男女。停電というハプニングの中、お互いの
心底にある鬱屈した感情を吐き出しあい、夢のような愛の一時を過ごすことに。そして顔も
知らぬまま別れ帰国した後起こる2件の殺人事件。それぞれ最も疑わしいとされる人物には
完璧なアリバイが....
この作品、魅力的な導入部を始めプロットも良いし推理小説的なからくりも良いですが、最大
の魅力として、男独特のやるせなさを見事に描いている所だと思う。著者は何故こんなにも
男性心理を上手く捉えているか不思議なくらいです。
個人的に主要登場人物の大湖浩平(だいごこうへい)の精神的葛藤には陶酔にも似た感覚を
覚える。いや陶酔できる推理小説ってのはありそうでない(笑)。この人物像に共感できる
か否かでまた評価もそれぞれ違うんだろうけどなア。
なんだろう、美しくも哀しい愛の行方なんて銘が打ってあるので女性向きなのかなと思えば、
否、これは男性の方が共感できるストーリーですね。また終わり方が何かさ......やり場の
ない感情が心の中を揺曳し続ける....
Wの悲劇 新装版 (光文社文庫)
夏樹静子さんの代表作で,映画やテレビドラマの原作にもなっていますね.
山荘で起こった大金持ちの製薬会社会長の殺人事件に始まる物語です.どんでん返しに続くどんでん返しで,とことん裏切られます.そして,その様子が警察署長の会見をとおしてコミカルに描かれています.
正当は推理小説といった趣の作品です.是非どうぞ.
腰痛放浪記 椅子がこわい (新潮文庫)
家内が腰痛に苦しむ中、この本を見つけた。
腰痛=骨や筋肉の異常、ととらえるのではなく、心の病気が腰痛として現れてるのではないか?考えてみるきっかけとなった。
作者の主治医、平井先生の言葉の中に「痛みから逃げようとするのではなく、痛みを受け入れる、とかどこまで痛くなるか観察してやろう、というふうに考えてみる」というようなものがあった。
心身のストレスに体が悲鳴をあげてるとすればこの考え方は納得できるような気がした。
病に対して視点を変えてみると、そこから治癒への道がひらけるのではないだろうか。