読み返してみて・・・おすすめ度
★★★★★
この本の初版が出た63年当時は、同名の映画が公開されたりしてロレンスは英雄として扱われていた。アラブの独立をバックアップ支援するという表向きの外交とは裏腹に、英国は二枚舌外交を行っていたことは既に知られていることである。その結果、今やロレンスはアラブ世界では「裏切り者」として捉えられている。著者の中野氏は、英文学者であると同時にロレンスをこよなく愛する硬骨の国際人である。ロレンスの真意はどこにあったのか、今となってはもはやわからないが、この本の中で中野氏は彼の思想に一歩近づこうとしているのである。
この新書はいまや絶版となっている状況のようであるが、古書店等で入手して再読する価値は十分にある。社会的・経済的そして政治的に常に注目されざるを得ない存在になってきたアラブ社会を日本人にきわめて早い時期に知らしめた書物としてとても重要な本であると思う。
アラビアのロレンス
おすすめ度 ★★★★☆
第一刷が1940年と、かなり古い本だが、読みにくさは全く感じなかった。
『智慧の七柱』をベースに、様々な書簡や回想録などの一次資料をつかって編纂されている。
雄大な英雄としてのロレンス物語と、苦悩する人間としてのロレンス物語が、うまく書けてい
ると思う。
いくつかの伝説的逸話も紹介されているが、それが事実であるか疑問がある場合は、著者によ
って一言添えられている。素人の自分には事実の判断のしようがないので、あまり鵜呑みにし
ないよう気をつける必要があった。