これだけのも映画を作ったら、もうリメイクなんてできないだろう。自然の作った砂漠という最高のロケーションの中で美しく撮りあげている。現場的意見だが、撮影状況を想像するとすごい根気だと思う。ロケハンはできないし、NGも出せないし、足跡もつけられない。内容も素晴らしく、ロレンスの人間臭さがよく表されている。英雄にされ、天狗になる所などかなりのナルシストっぷりがうかがえる。(笑)女性を一切使わず、妙な数字取りに走らないところもいい。戦争がテーマなのであまり女性受けはしないかも。できれば大画面で見たい傑作。
こうべをたれて感謝するのみおすすめ度
★★★★★
この傑作を云々する力はないです。ただ賛美するだけ。生まれてこの
かた2,000は映画をみましたが、これを超えるものには出会えていま
せん。
デヴイッド・リーンがこれを作ろうと思ったこと自体、奇跡です。
それを実行し、やり遂げたことが奇跡。その時代にピーター・オト
ゥールという役者がいたことが奇跡、そしてオマー・シャリフが
同時代人だったことが奇跡。奇跡が重なって出来たのがこの映画です。
この映画の美しさはどうでしょう。ピーター・オトゥールが長身を
白い衣装に包み、ブルーの瞳を輝かせて砂漠にたたずむその姿は、
ふと舞い降りた一羽の白鷺のよう。そしてまた、オトゥールと対峙する
オマー・シャリフは黒曜石の光を放ち魅了する。
砂の色、空の色、赤、黒、白...
四散していた膨大な数のフィルムを倉庫から探しだし、途方もない
時間をかけて纏め上げ、それをなんとボランティアでやってくれた
というスピルバーグ、スコセッシ両監督。
天才の仕事を次の天才が引き継ぐ。なんて素敵なことでしょう。
ロレンスと義経おすすめ度
★★★★★
前は海、後ろは山の敵陣。山を下ったのは義経。前は海、後ろは砂漠。砂漠を横断したのはロレンス。海側だけ守れば大丈夫という敵の裏をかく奇抜さ、大胆さ。自我の強い連中をまとめあげる統率力。二人とも戦いには恐ろしいまでの力を発揮するのに、政治的駆け引きが下手だから最後は不遇だ。どこか似ている二人のカリスマ。CGでない砂漠の戦闘場面だけでも、一見の価値ありです。
見る価値は充分ある。
おすすめ度 ★★★★★
果たしてロレンスはアラビア解放の英雄だったのか。それとも彼は、祖国である英国にも同志としてともに闘ったアラビアにもいいように使われ捨てられた犠牲者だったのか。これは、ラストシーンを見れば一目瞭然である。一番の友達であったアラビアの王子様が発した最後の一言は、きつい。
王道をたたき込まれている者や英国貴族としての処世術を身につけている高級官僚、軍の利益しか考えない上官と比べれば、ロレンスの何と無力なこと。役目の終わった彼に報いることなく、世捨て人のような人生を送らせ、死後は軍の士気向上に供するため銅像を建てる。アラビアの王子様の言を借りれば、青年の血気を借りて事を起こさせ、平和的収拾は、大人が甘い汁を吸いながら行おうということか。これは映画から推察したことで真の経緯は図り得ないし、よしんばこの推察通りであっても政治とはそのようなものなのだと言われればそうかもしれないが、やはり哀しい。
でも、この映画、見る価値は充分ある。前述のような怒りはあるものの、怒りを持たせてくれるのが映画のよさ。おまけに、すてきな男優ぞろい。ピーター・オトゥールのアラビア服姿は神々しいし、アレック・ギネスの王子様役は彼ならではのもの。王子様・王様のご登場に今だにあこがれる私的には、アレック・ギネス(サーのタイトルをお持ちだとか)に軍配が上がる。
概要
「ロレンス」の出現は20世紀の事件であった。第一次世界大戦下、ドイツと手を組んだトルコ帝国の圧政下にあったアラブの独立に燃えたT.E.ロレンスは、独自のゲリラ隊を指揮し、アラブの救世主と称えられるようになる。しかし、やがて英国軍上層部に利用されていたことを知る。そして、味方と思っていたアラブ人たちもまた青い目、白い肌のロレンスを裏切っていくのだった…。
本作は、名匠デビット・リーンが息をのむ映像美と雄大な音楽で、実在のイギリス人冒険家ロレンスの波乱に富んだ半生を描き、20世紀映画の金字塔といわれている。62年のアカデミー賞では主要7部門を独占した。ロレンスにピーター・オトゥールが扮し、一世一代の当たり役となったのをはじめ、オマー・シャリフ、アンソニー・クイン、アレック・ギネスら出演陣も豪華。70ミリの画面に現れる砂漠の美しさと、真っ白いアラブの衣装をはためかせながら砂漠に立つロレンスの雄姿に圧倒される。金髪、碧眼、アングロサクソン特有の細身で長身のピーター・オトゥールは、紛れもなくロレンスそのものであった。
「この映画を観た翌日、僕は映画監督になる決心をした」というスピルバーグは、89年、M.スコセッジ監督と共に、222分のオリジナル版に最も近い216分の「完全版」を復元。それがベースとなった本作では、4半世紀ぶりにオリジナル・キャストを再結集し、失われていた音声を再録。コンピュータで撮影当時の音域にまで修正し、リーン監督自らが再編集を行っている。(松本肇子)