私が感じたのは細かいディテイルより、「主人公がアメリカ建国(侵略)の歴史の実態を知り、それを行ってきた者が、日本の武士道という価値観に感化され、人としてもう一度立つ」という設定です。
主人公はアメリカ開拓の体験者として、銃火器によってネイティブアメリカン(先住民のモンゴロイド)の女、子供等を厭わず虐殺してきた自分自身の行いに後悔し、傷つき、酒に溺れ、生ける屍となっていた。一般の大衆はそれを知らず彼を銃の名手であり英雄と称えていた。またそれが彼を追い詰めた。かれは死に場所を求めるように日本に赴き職業軍人となるが、そこのは幕末の死に行く武士道という「哲学」に出会う。正々堂々と戦い、敵を尊重し、どちらが死んでも恨まない、また戦場で死んだ者を「誉れ」として称え、誇りに思う価値観に触れ、自身の死を望みながらも、彼はそこに一筋の光を見出す。
日本の「桜の散り行く様」に代表される死に対する積極的な価値観や言葉や吐息にさえも御霊(みたま)が宿り、人だけではなく言葉や物や自然にも尊厳を抱く日本人の心根などもうまく描かれていると思いました。
一瞬だけ映る真田氏の流れるような茶たてのシーンや柔道の原型である戦場の当身体術など忍者参上はご愛嬌としても、時代考証など考えたり、誰が盛り込んだかは詮索する必要などないでしょう。深く日本文化や日本人の価値観を表現しているすばらしい映画だと思います。
渡辺謙、真田の両氏の存在感は流石というしかなし。おすすめ度
★★★★☆
「パール・ハーバー」しかり、「デイ・アフター・トゥモロー」しかりで、ハリウッド映画に登場する我が日本の描写って、明らかに間違いのものが多いのだけれど、これは珍しくまともに日本の描写が出来ているという点では特筆に価する作品。
明治初頭、近代化を進める新政府と旧時代の文化・伝統を守って生活を続けようとする武士たちとを対比させながら滅び行くものの美学を描く。
武士側の総大将の勝元は、英語も話せるほどなのに、一方では時代の流れに抗うかのように旧時代の風習を固持しようともする。
渡辺謙さんもそうですが、真田広之さんも流石の演技の冴えを見せてくれます。
当初は新政府側として招かれたオールグレインだが、囚われの身となってから半ば捕虜扱い・・・とはいいながらも、共同生活を続けるうちに、そこは同じ人間同士・・・言葉の壁・文化の違い・風習の相違はあったとしても互いに心通うものがあって、いつしか当初は敵であったはずの彼等に肩入れしていくこととなる。
最初の戦闘で小雪の夫を殺してしまった自責の念もオールグレインにはあったことでしょうが、恋愛要素は少々中途半端に終わってしまったような気もします。
平穏な日々は決して続くことなく、近代兵器と物量作戦の前に武士側は粉砕されていく。
南北戦争の英雄であるオールグレインの手腕も・・・・結局のところ映画を通して見せる場面は無かった。
機関銃をあれだけ浴びせられながら・・・なんでオールグレインだけ生き残るのだ?
という疑問が、そもそも決してハッピーエンドではない作品のテーマと反していて不自然に映る点を除けば、なかなかの良作。
失われゆく「日本の心」を見事に描くおすすめ度
★★★★☆
西洋近代化に飲み込まれる日本の魂「侍」の最期を描いた作品
南北戦争で先住民と戦った記憶によるトム・クルーズの苦悩、葛藤が彼の内面を良く描いている
にわか騎兵隊で初めて侍と闘った時の侍の描き方が秀逸
威勢良い掛け声の後、静かに霧の中から現れる侍の姿は威風堂々迫力満点
そして忍者も決死の暗殺者と言う姿を描き秀逸である
消えゆく日本の最期の魂「侍」の死に様、生き様に感動
西洋人であるトム・クルーズが日本人以上に徐々に侍の魂を理解し尊重していく姿も感動
渡辺謙,、真田広之の太刀さばきも時代劇とはまた少し異なる迫力ある殺陣で見事である
静かに耐え忍び、奥ゆかしく献身的に介抱をする小雪は、時代の日本女性の姿を見事に演じている
多くを語らぬその内心に秘めたる熱き想い
寡黙に自ら為すべきを為す
その日本人の姿は、今は失われてしまった部分も多いと感じる
四季移ろいゆく日本の景色の映像も非情に美しく見事
日本米の消費低迷、日本酒の低迷、和心の崩壊、消えゆく日本文化
西洋近代化時代同様、自らの国民性、文化をないがしろにし、外国文化にばかり目が行きがちな現代日本人にとって、
もう一度自分の国の歴史文化、素晴らしさを見直すのにも良い映画であると思う。
泣きました。
おすすめ度 ★★★★★
作品全体を通しての印象だが、「サムライ」と大々的にタイトルに
日本の歴史を連想させる単語が登場してはいるものの、
歴史に忠実な時代劇…というより、むしろ他のハリウッド作品のそれに近い。
最初の侍との戦闘で主人公は囚われの身となり、やがてそのことが自身の転機になる
わけだが、その戦闘でのすさまじい強さといったら・・・まさにケモノ。
これが決死の覚悟で戦う者の強さか・・・それを考えさせられる場面でもある。
各シーンで描かれる戦闘で共通していえることで、ラストの戦闘では
敵の心すら動かし、涙させた。
主人公はもともとアメリカの軍人。さらには、日本へ来る前…物語が始まる前に
ネイティブアメリカンと戦い、それがトラウマとなっているように感じられる
(劇中でも断片的に描かれている)。
だからこそ、侍たちに心を動かされ共に戦うことを決心したのだと思う。
…ラストで涙した、敵の士官もアメリカにいたころの主人公と同じ思いで
侍たちの最後を見届けたのかな…と、今では思っている。
まぁ、何だかんだと書いてきたが、あまり深く考えずに見ることをオススメします。
ヘタに薀蓄を交えて語りだすと、これほどツマランものもないですよ。
(深く考えずに見ているオレは、そのたびに泣いています)
概要
演じるオールグレン大尉と同様に、トム・クルーズ自身が日本の武士道に心酔していく姿が伝わってくるアクションロマン超大作。ハリウッドが撮った日本の歴史という点でも、画期的な一作である。明治維新直後の日本で、軍を近代化したい政府の要請を受け、南北戦争の英雄オールグレンが招かれる。ごう慢な態度で軍を教育する彼だったが、反政府の侍たちとの戦いに敗れ、囚われの身となった山里で武士道精神にめざめていく。
姫路や京都でもロケが行われたが、ニュージーランドやハリウッドのセットで再現された明治の日本が壮観。衣装や小道具は、時代劇を見慣れたファンにも違和感はなく、むしろその細密さに驚かされる。大平原での騎馬アクションは色遣いも鮮やかで、黒澤明の『乱』を彷彿。トム・クルーズと小雪のロマンスには、あえて深く切り込まなかったことで作品全体のトーンも保たれた。侍たちを統率し、政府に反旗を翻す勝元役の渡辺謙は、トム以上の存在感。クライマックスでの彼の壮絶な演技には、身震いしてしまうほど!(斉藤博昭)