悪者見参―ユーゴスラビアサッカー戦記 (集英社文庫)
旧ユーゴのサッカーをずっと見てきた人は、90年代以降の政治社会の動きを本当に深く考えることができたと思う。そして国連など国際社会による制裁が続いていた時期、日本は旧ユーゴスラヴィアのサッカーにとって、飛び地になっていたというか、遠いサンクチュアリになっていたというか、ヨーロッパで行き場を失った選手や監督たちの生活の場にもなったんじゃないだろうか。それは日本サッカーにとって将来、かけがえのない財産になると思う。
この本はユーゴがあまりにも悪者扱いされていることにプロテストしている本だ。例えばクロアチア独立のきっかけとなったともいわれるディナモ・ザクレブvsレッドスターのマクシミル・スタジアムでの出来事。日本でも流されたVTRでは、ボバンがピッチに降り立ったクロアチアのサポーターを追いかけ回すセルビア人警官に対し、彼らを守るために跳び蹴りをくらわせた、という物語になっているが、実は違う。この試合の3日前に行われた選挙で独立派のツジマン大統領の率いるHDZが大勝、そのままのいきおいでセルビア人の象徴ともいえるレッドスターをホームに迎え撃つクロアチア側が、相手サポーターに対して投石などで攻撃し、たまらずレッドスターのサポたちがピッチに逃げたところを、追いかけ回し、警察はそれを止めに入ったのだ、と。当時ベオグラードにいた、大羽圭介・クロアチア大使は「セルビアの外交下手を象徴するような事件」としているが、まさにそんな見方もできるのだろう(p.25)。大羽さんは別のところで「マクシミル暴動を独立の1里塚と賛美する限り、クロアチアの民主化は遠い」とまで書いてるが、日本外交官の言葉としては思い切ったものだと思う。
この本はユーゴがあまりにも悪者扱いされていることにプロテストしている本だ。例えばクロアチア独立のきっかけとなったともいわれるディナモ・ザクレブvsレッドスターのマクシミル・スタジアムでの出来事。日本でも流されたVTRでは、ボバンがピッチに降り立ったクロアチアのサポーターを追いかけ回すセルビア人警官に対し、彼らを守るために跳び蹴りをくらわせた、という物語になっているが、実は違う。この試合の3日前に行われた選挙で独立派のツジマン大統領の率いるHDZが大勝、そのままのいきおいでセルビア人の象徴ともいえるレッドスターをホームに迎え撃つクロアチア側が、相手サポーターに対して投石などで攻撃し、たまらずレッドスターのサポたちがピッチに逃げたところを、追いかけ回し、警察はそれを止めに入ったのだ、と。当時ベオグラードにいた、大羽圭介・クロアチア大使は「セルビアの外交下手を象徴するような事件」としているが、まさにそんな見方もできるのだろう(p.25)。大羽さんは別のところで「マクシミル暴動を独立の1里塚と賛美する限り、クロアチアの民主化は遠い」とまで書いてるが、日本外交官の言葉としては思い切ったものだと思う。
Finale Dragan Stojkovic―ドラガン・ストイコビッチ完全読本
1999年3月27日、神戸ユニバーシアード記念競技場。
ストイコビッチのアシストで名古屋グランパスが得点。
ストイコビッチはユニフォームをたくし上げて咆哮した。
Tシャツには、「NATO STOP STRIKES」が浮かんでいた。
日頃、「スポーツと政治は別だから」と語っていた彼が、、、
ストイコビッチたち、セルビアのJリーガー達は、国際情勢を非常にしっかり
認識している。セルビアの大本営発表だけを信じているわけでは決してない。
西側先進国の情報もちゃんと入手している。インターネットの情報、現地への
電話連絡等々、しかも、彼等はミロシェビッチを支持していない。
彼らの情熱には感心した。
しかも、私は知らなかったのだが、ユーゴ空爆直前、セルビア側は譲歩しよう
としていた。空爆回避のために合意文書に調印する予定だった。そこで、アメリ
カは、アネックスBという付属文書を提出し、交渉を決裂させた。
その内容は、「コソボのみならず、ユーゴ全域でNATO軍が展開・訓練がで
き、なおかつ治外法権を認めよ」というものだった。
NATO軍への課税や犯罪訴追をも免除しろというこの条項は、ユーゴの占領
地化を意味するもので、こんな条件を飲めるはずがない。
そういうことまで、彼等はちゃんと把握していたとは驚きでした。
私はそんな情報は知りませんでしたし、私の読んだ5、6冊の本にも書かれて
いませんでした。
NATOの空爆は、コソボのアルバニア系住民を保護するためだという。
しかし、難民を受け入れているモンテネグロまで空爆した。
コソボでセルビア民兵による虐殺が起きたのは空爆開始後のことだ。
虐殺を止める為の空爆というのはまやかしだ。
コソボのアルバニア系住民地区に、劣化ウラン弾を大量に打ち込んだ。
その後、劣化ウラン弾を除去することは一切やっていない。
コソボのアルバニア系住民の生命を守る為ではなかったのか?
空爆後にコソボで殺されたセルビア人の数は、空爆中のアルバニア人の死者の
数を既に超えている。KFOR(コソボ平和維持軍)がいるにもかかわらずに。
そして、コソボ情勢は沈静化したそうである、、、
現在、コソボでは、ベトナム戦争時のダナン基地に匹敵する巨大な軍事基地が
建設されている。
「アメリカが何が何でも空爆したかったのは、世界制覇の戦略構築のためだっ
たのではないか」と。
パンチェボのバルカン最大規模の化学コンビナートが空爆された。同行した
慶応大学の藤田教授は、「世界最大規模の環境破壊だ」と指摘した。
ストイコビッチのアシストで名古屋グランパスが得点。
ストイコビッチはユニフォームをたくし上げて咆哮した。
Tシャツには、「NATO STOP STRIKES」が浮かんでいた。
日頃、「スポーツと政治は別だから」と語っていた彼が、、、
ストイコビッチたち、セルビアのJリーガー達は、国際情勢を非常にしっかり
認識している。セルビアの大本営発表だけを信じているわけでは決してない。
西側先進国の情報もちゃんと入手している。インターネットの情報、現地への
電話連絡等々、しかも、彼等はミロシェビッチを支持していない。
彼らの情熱には感心した。
しかも、私は知らなかったのだが、ユーゴ空爆直前、セルビア側は譲歩しよう
としていた。空爆回避のために合意文書に調印する予定だった。そこで、アメリ
カは、アネックスBという付属文書を提出し、交渉を決裂させた。
その内容は、「コソボのみならず、ユーゴ全域でNATO軍が展開・訓練がで
き、なおかつ治外法権を認めよ」というものだった。
NATO軍への課税や犯罪訴追をも免除しろというこの条項は、ユーゴの占領
地化を意味するもので、こんな条件を飲めるはずがない。
そういうことまで、彼等はちゃんと把握していたとは驚きでした。
私はそんな情報は知りませんでしたし、私の読んだ5、6冊の本にも書かれて
いませんでした。
NATOの空爆は、コソボのアルバニア系住民を保護するためだという。
しかし、難民を受け入れているモンテネグロまで空爆した。
コソボでセルビア民兵による虐殺が起きたのは空爆開始後のことだ。
虐殺を止める為の空爆というのはまやかしだ。
コソボのアルバニア系住民地区に、劣化ウラン弾を大量に打ち込んだ。
その後、劣化ウラン弾を除去することは一切やっていない。
コソボのアルバニア系住民の生命を守る為ではなかったのか?
空爆後にコソボで殺されたセルビア人の数は、空爆中のアルバニア人の死者の
数を既に超えている。KFOR(コソボ平和維持軍)がいるにもかかわらずに。
そして、コソボ情勢は沈静化したそうである、、、
現在、コソボでは、ベトナム戦争時のダナン基地に匹敵する巨大な軍事基地が
建設されている。
「アメリカが何が何でも空爆したかったのは、世界制覇の戦略構築のためだっ
たのではないか」と。
パンチェボのバルカン最大規模の化学コンビナートが空爆された。同行した
慶応大学の藤田教授は、「世界最大規模の環境破壊だ」と指摘した。
誇り―ドラガン・ストイコビッチの軌跡 (集英社文庫)
かつてユーゴスラビア代表として活躍し、Jリーグ名古屋で現役を終えたストイコビッチのサッカー半生記。セルビア・モンテネグロサッカー協会の会長を経て、現在は鈴木隆行が在籍しているレッドスター・ベオグラードの会長を務めています。
優れたサッカー選手としてだけではなく、ユーゴ内乱という激動の時代に代表チームの精神的支柱としてもキャプテンシーを発揮する姿が描かれていますが、偏狭なナショナリズムではなく本当に心の底から祖国を愛する姿にその偉大さをつくづく再認識しました。
優れたサッカー選手としてだけではなく、ユーゴ内乱という激動の時代に代表チームの精神的支柱としてもキャプテンシーを発揮する姿が描かれていますが、偏狭なナショナリズムではなく本当に心の底から祖国を愛する姿にその偉大さをつくづく再認識しました。