葛飾北斎 百人一首姥がゑとき (謎解き浮世絵叢書)
葛飾北斎と言えば誰もが真っ先に思い浮かべるのが《富嶽三十六景》であろう。
だが、本書で扱っている北斎はちょっと違う。
勿論《富嶽三十六景》に代表されるような美しい日本の風景は相変わらずであるものの、同時に「百人一首」の和歌を北斎なりの解釈で表現した異彩を放つ作品群なのだ。
本書は作品の紹介のみならず歌人の略歴、和歌の釈文と意味も同時に載せている為、「百人一首を忘れてしまった」という方でも大丈夫。
簡単な問題を提示してそれに答えて行くという解説方法も非常に解り易く、誰でも楽しめるに違いない。
そして何よりも嬉しいのは、やはり図版を見開きの大画面で掲載している点だ。
北斎独特の構図の美しさ、人物や動物達の多彩な表現、そして精緻な建造物等には思わず時が経つのを忘れて見入ってしまう程であった。
そして深みのある藍色、艶やかな茜色等、日本の伝統色を綺麗に再現しており、当時の錦絵が如何に鮮やかであったかを髣髴とさせる。
更に興味深いのは、題材こそは百人一首であるものの、描写は北斎が生きた時代に置き換えられているという点である。
そこには北斎が思い描いた百人一首の世界が広がっており、非常に新鮮であった。
因みに、個人的には安倍仲麿「天の原…」の作品が特に印象に残った。
仲麿が海面に映る月を遠く見つめるその姿には、異国にて日本を思う物悲しさが痛い程に伝わって来るように思う。
そしてそれを一場面で描き切った北斎の才能を改めて見せ付けられ、感嘆せずにはいられなかった。
尚、本来ならば「百人一首」と言うからには全部で100の図版があって然るべきなのだが、実際には27作しか制作されなかったようである。
恐らくそれは、贅沢な制作費の割にはそれ程の人気を博する事がなかった為に「打ち切り」になったのであろうとの事、企画としては謂わば「失敗作」だったというのだ。
だが、私にはそのようには感じられなかった。
確かに当時の流行にはそぐわなかったかもしれないが、何よりも北斎本人は全作品を描く意欲があったと言うし、それだけに新たな世界に挑戦する北斎の姿がそこに見出せるというだけでも非常に貴重だと思えるのである。
本書は北斎の錦絵の最後を飾る作品集として、そして北斎の新たな側面を見せてくれるという意味に於いても意義深く、多くの北斎愛好家を魅了する事は間違いないであろう。
だが、本書で扱っている北斎はちょっと違う。
勿論《富嶽三十六景》に代表されるような美しい日本の風景は相変わらずであるものの、同時に「百人一首」の和歌を北斎なりの解釈で表現した異彩を放つ作品群なのだ。
本書は作品の紹介のみならず歌人の略歴、和歌の釈文と意味も同時に載せている為、「百人一首を忘れてしまった」という方でも大丈夫。
簡単な問題を提示してそれに答えて行くという解説方法も非常に解り易く、誰でも楽しめるに違いない。
そして何よりも嬉しいのは、やはり図版を見開きの大画面で掲載している点だ。
北斎独特の構図の美しさ、人物や動物達の多彩な表現、そして精緻な建造物等には思わず時が経つのを忘れて見入ってしまう程であった。
そして深みのある藍色、艶やかな茜色等、日本の伝統色を綺麗に再現しており、当時の錦絵が如何に鮮やかであったかを髣髴とさせる。
更に興味深いのは、題材こそは百人一首であるものの、描写は北斎が生きた時代に置き換えられているという点である。
そこには北斎が思い描いた百人一首の世界が広がっており、非常に新鮮であった。
因みに、個人的には安倍仲麿「天の原…」の作品が特に印象に残った。
仲麿が海面に映る月を遠く見つめるその姿には、異国にて日本を思う物悲しさが痛い程に伝わって来るように思う。
そしてそれを一場面で描き切った北斎の才能を改めて見せ付けられ、感嘆せずにはいられなかった。
尚、本来ならば「百人一首」と言うからには全部で100の図版があって然るべきなのだが、実際には27作しか制作されなかったようである。
恐らくそれは、贅沢な制作費の割にはそれ程の人気を博する事がなかった為に「打ち切り」になったのであろうとの事、企画としては謂わば「失敗作」だったというのだ。
だが、私にはそのようには感じられなかった。
確かに当時の流行にはそぐわなかったかもしれないが、何よりも北斎本人は全作品を描く意欲があったと言うし、それだけに新たな世界に挑戦する北斎の姿がそこに見出せるというだけでも非常に貴重だと思えるのである。
本書は北斎の錦絵の最後を飾る作品集として、そして北斎の新たな側面を見せてくれるという意味に於いても意義深く、多くの北斎愛好家を魅了する事は間違いないであろう。