正直なところ、「産業応用」のために製造や研究における参考書として利用する書籍ではありません。
かといって、クロスカップリングの「基礎」が教科書よろしく解説されているわけでもありません。

基本的には、bluebonnet氏が書かれているとおりの寄稿の寄せ集めです。そういった意味では「読み物」として価値を見出す方向性の書籍かと思います。過去の論文を俯瞰で眺めるには良いと思います。

新品2000円台とこの手の書籍としては非常に安価なのですが、私は1000円強で中古品を購入しました。この価格なら読み物として納得のいく商品だと思います。

そうそうたる学会をリードされてきた研究者の短編集。各章で述べられる反応自体は、現在良く目にしたり、実際に使っているものであるが、それがどういうきっかけで見出されてきたか、また、各研究者の生き方・哲学が述べられていてすごく刺激になる。読んでいて晴れ晴れする書籍だ。各章は短いながら、研究をライフワークとしてやってこられた方たちの重さを感じる。特に、企業に入り、化学という１本道から離れてしまいそうな人はぜひ読むとよい。自分が、再度化学という１本道に引き戻され、真に大切なものを見ようとする気持ちが戻ってくるかもしれない。ぜひ、買うべし。