地獄のアリス 2 (愛蔵版コミックス)
近作では主人公が悪夢的な日常の無限ループに陥る話が多い松本氏。
但し本作は舞台となるカタストロフィ後の文明を維持した数少ないコロニーの対立組織が主人公の天才少年狙撃手シュウとメイド姿のセルロイド(男性への奉仕を目的に作成された精巧なアンドロイド)アリスを発端とした些事から全面戦争に陥る様をスリリングに描いて居り、読み応えが有りました。
松本作品の主人公らしく、得意な事とそうでない事のギャップが凄まじいシュウですが、一種の恐怖症を抱えて居り、それを読者に悟らせながら描写されるイベント帰路の銃撃戦はお見事。
そして銃撃戦から全面戦争に陥った後半のクライマックスではシュウの悪魔的狙撃術が炸裂し、凄惨ながら見事なカタルシスが発生します。
一巻ではとてもタイトル・ロールとは思えない木偶の棒だったアリスもどうやら大変な秘密と能力を持っているらしき事が仄めかされており、腕力・武力ではなく理想と政治力で乱世で成り上がろうとする青年ケンジ、屈折した美少女イライザと今回は出番が少なかった唯一の常識人マキルダの今後も含めて続きが楽しみです。
描線は粗っぽいながらもポップで達者な絵ですが、コミュニケーション不全の人間関係と上記戦闘描写に加えてレイプや人体解体等酷いいシーンも続出致しますのでその点が苦手な方はご注意を。
地獄のアリス 1 (愛蔵版コミックス)
個人的に前に連載していたフリージアをそこまで楽しめなかった自分ですが、この作品は楽しめました。驚くほどエンターテイメントしてます。
世界設定、濃いキャラクター、これからの伸びしろなど、とても期待が持てる作品だと思います。
特に主人公の「自分の世界なら最強、他の世界ならゴミ」という状況で彼はなにか変わるのか、変わらないのかなど次の巻が楽しみです。