ベリー・ベスト・オブ・ジェームズ・ゴールウェイ
とある動画サイトで氏の演奏を聞き、その素晴らしさに感銘して購入しました。私が聞いたのは今CDにも収録されている「ダニーボーイ」の演奏でしたが、自然と北欧の冷たい風景が浮かんでくるほどの名演奏でした。
ゴールウェイ氏のフルートは、まるでフルートで歌っているようで、聞いていると心が気持ちよくなる演奏です。例えば映画「タイタニック」のテーマソングである「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」ですが、公式のサントラに入っているものとゴールウェイ氏の演奏を聞き比べてみれば、(恐らく前者で演奏されている方も相当の方なのでしょうが)この違いはもうどうしようもなくなってしまいます。
幸運にもさわりの部分を視聴できるようになっているので、是非その部分の音色の違いを聞き比べてください。
(セリーヌ・ディオン女史のCDに入っている「My heart will go on」→『ザ・ベリー・ベスト』)
(追記)このCDのジャケットになっている絵ですが、幾つかの写真と文字を組み合わせたシンプルなものですが、その色調や配置の美しさは一流の仕事です。(調べた所、どうやら普段工業デザインをしている会社が手がけたもののようです)サイトの写真よりも濃く、試聴画面で見られるものよりも薄い感じですが、実際の表紙は品のいい感じのするとても良いものです。そちらも是非一度見てみてください。
決定盤!!クラシック・スーパー・ベスト101
いくら名のある名演奏のアーティストの演奏を集めて見たところで、6枚組に101曲も詰め込むために、少し長い曲は「抜粋」してしまっている。これでは名曲・名演奏であっても、もはやその名に値しない代物である。
少なくとも1楽章単位でおさめるのは、最低のマナーであると思う。そうで無くては名曲の名を汚すものである。 こうした代物をクラシックのビギナーにと言うのは、全く持って礼を失していると言わねばならない。
「東芝ともども、そこのところの配慮が足らない。センスを疑う。 メーカーの猛省を促したい。」
6枚組は直ぐ止めて、10枚組位の最低1楽章単位で収録したものに直して、是非発売するべきである。
日本には無いが、20大作曲家のベスト作品を30へ40枚組くらいにおさめて、10枚単位に分けてシリーズで発売する位の発想がなぜないのか分からない。そうで無くては文化国家とは言えないのでは無いのかとさえ思う。
ハーレム・ノクターン~サム・テイラー・ベスト・セレクション
子供の頃、家にあったサム・テイラーのLPが好きで良く聴いていました。当時「ジャズ」の演奏とはこういうものだと思っていたわけで、後にソニー・ロリンズやコルトレーン、アーチー・シェップのテナーと出会って、サム・テイラーとは何か違うなと思いながら、以来ほとんど聴くこともなく今日まできました。
懐かしさにかられて、何十年ぶりに彼のムード音楽のエッセンスとも言える『サム・テイラー・ベスト・セレクション』を聴いています。
ハモンド・オルガンやエレキ・ギターと呼んでいた懐かしいサウンドがバックに流れ、時代を感じさせます。アレンジは平板で録音もナロー・レンジです。坂口紀三和氏が書いたリーフレットの解説を読んでも録音年代がなく、多分日本で人気があった1960年代の収録ではないでしょうか。今の装置で聴くとこの時代がかった音も郷愁を感じさせるものになっています。当時の喫茶店やバーのBGMにこのような音楽が流れていたと感じさせるものでした。
もっともサム・テイラーの演奏だけは今でも艶やかで実に魅力的です。歌心が満載で、甘い音色はもう少し評価されてもいいのでは、と思うぐらいです。テクニックもあり、旋律の奏で方は特殊な才能と言ってよいでしょう。度々来日して膨大な録音を残したわけで、そのような売れ方をしなければ、アメリカでももう少しジャズらしいアルバムを残せたのかもしれません。
1916年に生まれ、1990年に亡くなっており、当然過去の人なのですが、栄光の一時代を築いたジャズ・メンとして記憶に値する人でしょう。
ダニー・ボーイ
デビュー作から、島田虎之介は登場人物の持つ『隠された物語』を重視しているようだ。
ラストワルツでは丁寧に背景を語っていた(これはとんでもない想像力だった)が、新しい作品になるごとに、次第に美しい『行間』ができてきたように思う。
2作目、東京命日におけるあとがきで、『東京物語の原節子の夫は、いないことによってかえって家族に強く影響を与える』という言葉が書かれている。描かれない背景や人物が、登場人物に強く影響を与えている。
本作の島田虎之介はそのような『行間』を、これまで以上に自然に書いている。 1コマ1コマの中に、人物の行動や背景に対して、読者の想像を巡らせる『間』がある。もはや漫画の域を越えているように思う。
そして最後、主人公が歌うシーンは驚くほどせつなく、驚くほど明るい。ひとつの感情に全く収斂されずに、逆に解放されてしまった。
見事です。傑作。
ひたすら奇妙にこわい話―寄せられた「体験」 (光文社文庫)
公募の形をとる、阿刀田氏選のショート・ショート集。
毎回様々な形の作品が載せられるが、今回も多様な物語が紹介された。
基本的に各筆者の体験に基づくものとされているが、多少脚色が強いと思われる作品も存在した。
ネタバレになるのでタイトルや内容は書けないが、
思わず爆笑するような「オチ着き」のものもあり、
今回は「こんなのもあり?」という雰囲気だった。
タイトルだけ見ると怪談集のように思ってしまうが、
各筆者がその人生の過程で触れ合ってきた人々との心の交流を描いたり、
生と死を見つめた深い味わいのある文章がちりばめられている。
また、ショートショートということで贅肉のない、美しい文章も数多くあり、
読んでいて清清しい気持ちになることができた。