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母 (角川文庫)

三浦 綾子
おすすめ度:★★★★★
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マリア
おすすめ度 ★★★★★

多喜二の母がキリスト教徒であったことから書き上げる事を決めたという著者。
日本が貧しかった頃の話。
貧しい人々の代弁をして殺された多喜二はキリストであり、
母はマリアの気持ちに一番近い人。

多喜二と母の物語だけではなく、その家族や時代の物語。
幼少の頃からのエピソードが沢山織り込まれている。
三浦さんの本は初めてでしたが、どんどんと引き込まれていく本書に
次回もまた読んでみたいと思わされた。

この本を薦めてくれた父に感謝したい



本当の愛とは何かを描いた三浦文学の最高傑作
おすすめ度 ★★★★★

この本を読んで一番印象に残ったのは、小林多喜二がタミちゃんに示した愛の気高さだった。

多喜二は極度の貧しさのために身売りに出されたタミちゃんを救い出そうとする中でこんなことを言う。

「母さん、人間は、物でも、動物でもないんだ。もっと貴いものなんだ。それを売っただの買っただのして、よいもんだろうか。金の力で、いやだいやだという女を、男の思いのままにして、いいもんだろうか」(99頁)

「毎晩男に体を買われて、つらい思いをしている女が、小樽だけでも何百人もいる。日本中にはどれほどいることか。女は死ぬほどいやな思いをしているのに、男はそれが楽しみだ。男にとって女は、単なる遊び道具なのか。人間が遊び道具、冗談じゃない。たった一度の人生だよ、母さん。その人生を泣いて暮らす女がいる」(100頁)

そして、やっとのことで大金を工面してタミちゃんを身請けすることに成功するが、多喜二は言う。

「おれはタミちゃんを苦界から救い出したいだけなんだ。ここですぐおれの嫁さんになってくれといえば、おれの金で救い出されたタミちゃんは、断るにも断れん」(108頁)

「男と女は互いに自由でなければならないんだ。自由な身でつき合って、それで結婚する気になったら、結婚すればいい。とにかく今のタミちゃんに結婚を申しこむのは、金で女を買うのと同じことになる。おれは、そうはしたくないんだよ。わかるだろ、母さん」(109頁)

タミちゃんは多喜二一家の所に身を寄せるようになるが、十ヵ月余りで突然いなくなってしまう。多喜二は目を真っ赤に腫らし、何日も駆けずり歩いてタミちゃんを探す。タミちゃんは病院の住込みとなって働いていた。それを告げてから、多喜二は母セキに言う。

「帰ってくれって頼んだけど、わたしは初めて売られずに働くことができた。どんなことがあっても、自分で働き通せる自信が欲しい。今また多喜二さんの所に世話になったら、自活を身につけることができなくなってしまう。タミちゃんはそう言ってな母さん、まるで一週間前のタミちゃんとは、別人みたいに、しっかりしていた。あれを連れ戻したら、おれはタミちゃんの成長を邪魔立てすることになる。タミちゃんは自活したんだ。喜んでやってくれ。あのタミちゃんが、自分で見も知らぬ家を訪ねて、雇ってくださいって、言えるまでになったんだ」(125頁)

心底タミちゃんと一緒になりたいと願いながら、こう言い切れる多喜二の愛こそ、本物の愛であると思う。多喜二が示した愛は、相手を自分の思うように扱うのではなく、相手の成長を心から願う愛。一体どれくらいの男が女にこのような愛を示せるだろうか。

物語の後半では、多喜二の母セキが多喜二の虐殺後、キリスト教を信ずるに至る過程が描かれている。セキは素朴な信仰を持ってイエスを信じ、多喜二の死を乗り越えて心に安らぎを得る。セキは言う。

「わだしは、『イエス涙を流し給う』って言葉、何べんも何べんも、あれから思ってる。イエスさまはみんなのために泣いてくれる。こったらわだしのために泣いてくれる」(224頁)



高校受験の面接時に紹介しました。
おすすめ度 ★★★★★

この本を読んで、えらく心に残ったので、高校受験の面接の際に、教官にこの本を紹介した位です。

子を想う母の心情が時系列に沿って書かれており、
本の中にガッと引き込まれていく自分を感じました。



心を打たれました
おすすめ度 ★★★★★

方言により柔らかさを増した、素朴・率直な語り口のおかげで、
陰惨な雰囲気は無く読み進めることができます。

小林多喜二さんの人柄や、思想の背景。
貧しいけれど家族の親和に恵まれたセキさんの、女性としての人生。
人々が助け合う姿。わけもわからず息子を殺された母の思い。
いろんな要素がすべて溶け込んで、終盤の、信仰をもったセキさんの書き物へと帰着していきます。
これほど自然な信仰の表現は初めてでした。

なぜ優しい孝行息子の多喜二が、小説を書いただけで拷問にあって
殺されなければいけなかったのか?
神仏はどうして守ってくれないのか?
という問いは、素朴なだけに、永遠のテーマのように感じます。

作品中の多喜二さんが繰り返すように、
「世の中に貧しい人がいなくなって、みんな明るく楽しく生きられる世の中にしたい」
という気持ちで戦ってきてくれた人達のおかげで、今があるのでしょう。
子どもを売るような貧しさは、今の日本にはあまり無いけれど、
はたして人々を思いやって、楽しく暮らせているだろうか・・と思うと、切ないです。



骨太な母、そして人間としての悲しみを乗り越えた人生
おすすめ度 ★★★★★

87歳の生涯をおくった、骨太な小林多喜二の母セキ。多喜二や5人の兄弟姉妹を見守り、夫を信じ、懸命に生たセキ。
貧困の中で生まれ育ち、嫁ぎ先でも貧しい暮らしが続いたが、それを当然と思い、ただ6人の子供達を愛し懸命に見守る姿の骨太さが印象的だった。そして、家庭の事情で結婚したものの、その夫に対しても信頼を決して忘れず、大切な伴侶として、共に一所懸命働いた姿が美しく見えた。三浦綾子氏はセキをおおらかな人と解説してるが、その反面、本人の言葉では「不安症なんだよ。それで子供達にも心配かけてしまってる」と語っているのが印象的。多喜二の虐殺以後、セキの心が混沌となるが、キリスト教を通して生き方のヒントを得て「心安らか」になった。多喜二の死の悲しみから立ち上がり、気丈で丈夫な体で87歳の一生を終えた。「人が喜んでくれるのは、何より力になる」というセキの言葉の通り、多喜二死後も懸命に生きた姿が輝かしかった。
解説に、三浦綾子氏はセキの心中に共感してセキを描き、多喜二を虐殺したような暗黒の時代を再びもたらしてはならないという祈りが込められていると書かれていた。まさに、終戦記念の8月に読むに相応しい一冊。


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