813 (続) (新潮文庫―ルパン傑作集)
ルパンの人間性が、怪盗であっても、その所作に喝采を送りたくなる気持ちを目覚めさせます。
縦横無尽に活躍する姿は、万能のように思えます。
ルパンにも予定外のことは起こり得て、自分の思うままにはならないことも分かります。
最後の方で、ルパンの乳母、ルパンの家族に関わる話が出てくるかもしれません。
813 (新潮文庫―ルパン傑作集)
図書館でたまたま見つけて懐かしくて久し振りに読んで
みました。ストーリーの胸のすくような切れ味は今更
言うまでもありません。
ただ、私は特に「赤い絹の肩掛け」という短編が好き
だったので真っ先に読んだんですが、ストーリー自体が
おもしろいのは当然としても、どうも訳文が今の感覚で
読むと表現が古すぎる部分があって、ルパンの華麗さと
いうか、カッコよさが今ひとつ伝わらない感じがして
残念です。
子供の頃、南さんの訳文にすっかり慣れ親しんでしま
ったからでしょうか?
ルパンが自分の事を「ワシ」「ワシ」言ってるのも
気に障るし(田舎の中小企業の成り上がりのオッサン
じゃあるまいし、通常「紳士」はワシとは言わないと
思う)、怪盗紳士ルパンが所々、嫌味なファイロ・
ヴァンス風みたいな人物表現になってるのも正直な
ところ凄く嫌です(笑)。
(ヴァンスはヴァンスでまた好きなんですが)。
よくはわかりませんが、訳者の心の中でのルパンは、
少々昔気質のヤクザの親分みたいな印象になってるん
でしょうかね?
遠い昔から、例え盗人であろうと、粋でお洒落な人物
を好むフランス人の感覚と、
「怪盗が紳士?何言っとんねん?所詮泥棒は泥棒」
っていう極めて日本的な感覚の違いなのか、はたまた
時代背景なのかもしれないし、事情は伺いしれません
が・・・
ただそういう点を除けば、とても楽しめたし、やはり
名訳なんでしょうね。
今度は、他の訳文付のルパンも探して読んでみようと
思います。