獏屋鶴亀放浪ノ譚 (バーズコミックス ガールズコレクション)
この作品は「黒甜ばくや薬笥ノ帖」と対になった作品なので
単品で読んでも支障はないが、出来ればこちらから読んで
その後「黒甜ばくや薬笥ノ帖」も揃えられることをお勧めしたい。
獏を扱う話は多いが、この作品にはいろいろな事情で獏に取り込ま
れてしまった人、獏自身の話など、個性ある話がそろっている。
中でも特に好きなのは「鬼面と雪」の話だ。
人を傷つけてしまって自ら封印に身を置く獏が、ひょんなことで
なついた少女を傷つけまいと、自分の命を犠牲にしてまで守ろうと
する。
獏にだって守りたいものはあるのだという、強い思いを見せつける
心温まる話だ。
「いばらの花」は哀しい、そして寂しいお話だが、これも印象的で
心に残った。
いつでも言える、いつの間にか伝えるのを忘れてしまった言葉。
「ありがとう」とか「大好き」という思いを、いつでも言える、
だから後でと思っていてはいけないのだと、そう言われた気がした。
登場人物や獏の強烈さに、主役の2人がややかすみがちな部分も
あるが、逆にこれで話が引き立っていて良いと思う。
カバーの下のミニストーリーも面白かった。
仕事の合間に読んで、ふふふと一息つきたくなる作品である。