エゴイズムにおける過去と現在のカノン おすすめ度 ★★★★★
「かき」「小波瀾」は大人の裏表にも社会の上下関係にも染まる前の童心としての五感の夢を
まっすぐに書いてから ある大人の好意が 別の大人の目論見を壊したという怒りに子供は衝突させられる
「カシタンカ」ドストエフスキーは 白痴で わが国の人間は実務に向いていないと ロシアの合理性から程遠い日常を嘆いた にも関わらず理性と組織の芸術クラシックバレエを
世界最高峰に押し上げたロシアの風土からして非現実的だ
「アリアドナ」堕ちる快楽と清純への憧憬がマノン・レスコーの限界を説教っぽくなく焙り出した 牧歌的な領地も清廉な紳士も魔性に陥落されてしまうチェーホフのマノン・レスコーだ 現代日本の現実を見たり聞いたりしても
やはりマノン・レスコーは不滅なのか
「いい質問は質問の中に答えが含まれている」ドストエフスキーは抽象的な言葉に
あらゆる上昇願望 あらゆる時代 あらゆる国の人生を押し花のような分析の美に高め
チェーホフは事実状態のまま投げ出す 本書の収録作品は思想や芸術の出発点であり
人間としての破綻の序曲でもある
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