作品は文句なしおすすめ度
★★★★☆
デジタルリマスター版という言葉に期待をこめて購入しました。
東北新社のものと比較すると確かに映像の質は幾分高いです。
フィルムの傷は軽減され、色調も黒がマイルドになっています。
しかし気になった部分として、パッケージ裏に
本編167min ん? 174分じゃない?
どうやらPAL盤のNTSC変換のようです。
確かにいわれてみれば少しせわしないような気もしました。
次にもとのマスターが原因なのかもしれませんが、
カットの切り替わりの時に一瞬すごい量の傷が発生して画面に雨が降ります。
古い作品ということも考慮すれば仕方ないんでしょうが。
映画史の流れを変えました
おすすめ度 ★★★★★
“甘い生活”はやはりフェリーニ一世一代の傑作であり、その後の映画の地平を大きく斬り拓いた画期的な作品だったと思います。 この映画のスタイルを模倣した作品はその後無数に作られ、現在でも作られ続けていますが、そのアイデアの革新性とテーマの大きさにおいてこれを凌駕する作品は未だにないと思います。
まずこの作品には起承転結のストーリーというものがありません。 それよりも同じ登場人物たちが繰り広げる複数のエピソードを繋ぎ合わせて、そこから一歩距離を置いて見ると作品全体のテーマがパッチワークのようにして見えてくる−という構成になっています。 こういう手法は前例がないわけではありませんが、はっきりとそれを意識して映画を作っていった監督としてフェリーニの右に出る人はまずいないでしょう。 彼がそのパッチワークで描いてみせたテーマはズバリ、大量消費社会に生きる私たち人間の姿−その不安、滑稽さ、不可思議さそのものだったのだと思います。 作家志望なのにゴシップ記事を書いてそれなりに甘い生活を楽しんでいる主人公。 演技力ゼロのグラマーなスターに群がるパパラッチの群れ。 身を焦がす愛に生きたくてもそうなれない宙ぶらりんなセックスライフ。 成功しているように見える登場人物の原因不明の自殺。 心は空虚でも街に出るとそこは夜毎のドンチャン騒ぎ。 宗教ももはやエンターテイメントの一種。 この内容を1960年という時点で映像化して見せたというのはまさに天才のひらめきだったと思います。
ラスト、海辺にうちあげられた醜悪な怪魚を見つめる主人公に、天使のような少女が向こう側から何か一生懸命語りかけます。 しかし彼には彼女が何を言っているのか聞き取れません。 もはや天使の声は人間には届かないということなのでしょうかー。 映画の楽しみ方は人それぞれですし、古典的作品を見なければならない、などと言うつもりもないのですが、まだ未見の方がいましたら−これを見逃す手はありませんよ。