ムルナウの執念、ベリアトゥーアの執念 おすすめ度 ★★★★★
ファウストはムルナウがハリウット進出前夜ドイツで製作した最後の作品、一般的にはムルナウの絵画的要素の集大成として捉えられているが今回DVD化された”決定版”の製作についてはムルナウ研究で知られる一人の映画史家(Los proverbios chinos de F.W. Murnauの大著がある)の関与抜きには語れない。彼はムルナウが意図したであろうファウストを復元する為に欠落箇所と最上のカットを捜し求めて20年に渡ってヨーロッパ中を駆け巡り、あらゆるテイクの発掘を行なった。テイクの相違については自ら監修した特典映像で触れられているが今回の”決定版”はベルリン、ロス、コペンハーゲン、ウィースバーデンの4箇所から異なる7つのネガを使用して作成されている。
その成果についてはボローニャで行なわれたシンポジウムで発表され、由良君美の著作『セルロイドロマンティズム』のあとがきで四方田犬彦がそれに立ち会った時の興奮について触れている。
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