壬生義士伝 5 (ホーム社書籍扱コミックス)
強い東北訛り、倹約家、質素な服装、謙虚な所作により、隊内では少々軽んじられながらも、一部の隊員には強く慕われていた文武両道の吉村貫一郎を描く本シリーズ、実に角川書店、講談社に続いてホーム社に移籍しての第三章、待望の発売です。
浅田氏の原作に負けない、画業50周年を迎えたながやす氏の絵が素晴らしい。
80年代に受けた大友克洋氏の影響を完璧に消化して自分の物にした、現在でも第一線の素晴らしい漫画家で有る事が解ります。
初めて「愛と誠」でブレイクした時に比べても瑞々しさに於いて負けていないのが凄い。
巻頭の連載時を再現したカラー頁の美しさとそれが意味する物には思わず胸が熱くなる魅力が有ります。
本巻は前半の切腹を命じられた貫一郎が己の半生と孔子の言葉を反芻するシーンから、後半は大正4年、元新撰組の池田七三郎が語る彼の半生と貫一郎の想い出をフラッシュバック形式で描いています。
苗字帯刀の権利を武士階級から買った、苦労知らずの坊ちゃんだった七三郎が、檄文に影響を受けて新撰組に入り、吉村と出会う様子を比較的穏やかに描いて居りますが、次巻に向けて殺伐とした空気が漂い始めます…。
ながやす氏は現在も殆どお一人で描いて居られる所為か、1-2年に1冊しか単行本が出ませんが、この内容でしたらお待ちします。
時代劇画がお好きな方だけではなく、漫画好きの方には文句なしにお薦めです。
巻末には連載時の扉絵コレクション付です。
浅田氏の原作に負けない、画業50周年を迎えたながやす氏の絵が素晴らしい。
80年代に受けた大友克洋氏の影響を完璧に消化して自分の物にした、現在でも第一線の素晴らしい漫画家で有る事が解ります。
初めて「愛と誠」でブレイクした時に比べても瑞々しさに於いて負けていないのが凄い。
巻頭の連載時を再現したカラー頁の美しさとそれが意味する物には思わず胸が熱くなる魅力が有ります。
本巻は前半の切腹を命じられた貫一郎が己の半生と孔子の言葉を反芻するシーンから、後半は大正4年、元新撰組の池田七三郎が語る彼の半生と貫一郎の想い出をフラッシュバック形式で描いています。
苗字帯刀の権利を武士階級から買った、苦労知らずの坊ちゃんだった七三郎が、檄文に影響を受けて新撰組に入り、吉村と出会う様子を比較的穏やかに描いて居りますが、次巻に向けて殺伐とした空気が漂い始めます…。
ながやす氏は現在も殆どお一人で描いて居られる所為か、1-2年に1冊しか単行本が出ませんが、この内容でしたらお待ちします。
時代劇画がお好きな方だけではなく、漫画好きの方には文句なしにお薦めです。
巻末には連載時の扉絵コレクション付です。
ながやす巧作品集 (KCデラックス )
『愛と誠』『Dr.クマひげ』『壬生義士伝』で知られる漫画家・ながやす巧!
ながやす巧氏といえば、緻密な人物・風景描写に定評があり、その作風に影響を与えた漫画家は少なくなく(初期のあだち充や秋本治のタッチにも少なからず氏の影響が伺える)、何よりもアシスタントを使わずに全てを自分の手で描きあげる完全主義者の漫画家である。
今回は画業45周年(2008年現在)を迎えたながやす氏の短編集が収録された内容となっている。
・ 中国で行われているという死者との形だけの婚礼という不思議な慣わしを描いた『幽婚』〈1991、原作:市川森一〉
・ 廃線を間近にした北海道ローカル線の終着駅で定年間近を迎えた謹厳実直な駅長に訪れる心を揺さぶる“やさしい奇蹟"の物語を描いた『鉄道員(ぽっぽや)』〈1999、原作:浅田次郎〉
・ かつて世界に挑んだ事もある落ちぶれた日本チャンピオンの中年ボクサーが再起を賭け、新進気鋭のボクサーに挑む姿を描いた『チャンピオン』〈1984、原作:史村翔〉
・ 故郷(北海道・襟裳岬)を捨て、都会(東京)へ出た男女の悲しく儚い恋愛ドラマを描いた『その人は昔』〈1971、原作:松山善三〉
『幽婚』は、“起承転結”でいうと“転結”の抜けた消化不良のような内容だった。後に役所広司主演でドラマ化(1998・9・5放送)され、芸術祭優秀賞ほか数々の賞に輝いたそうだが、ドラマはどうなのか見てみたいものだ。
『チャンピオン』は、ありきたりといっては失礼だが、まずまずの印象だった。
『鉄道員(ぽっぽや)』は最も特筆すべき作品だろう。原作者の浅田次郎氏が絶賛されるのも頷けるし、私も久しぶりに読んでみたが、ながやす氏の類まれなる画力並びに表現力によって原作の世界観を踏襲し、見事に再現(もしくは映画をも凌駕した)しており、また、ながやす氏の描く暖かみのある人物像や構成力によって物語にグイグイ引きこまれていき、読後感としては何かしら余韻の残る印象を受けた(『チャンピオン』よりもこちら(と『その人は昔』)の方を完全カラーで再現して欲しかった)。
『その人は昔』は『愛と誠』以前(メジャーになる前)の作品であり、元は1966年当時トップアイドルだった舟木一夫氏のヒット曲を基に映画化〈1967年公開、監督:松山善三、主演:舟木一夫、内藤洋子〉された作品(内容もミュージカル的な要素があり、現在の『愛と誠』に通じるものがある)である。
ただ内容的には、都会(東京)=冷たいというロジックで描かれている事に読んでいて些か抵抗があり、都会の生活に染まりながら次第に変わっていく二人の過程やクライマックスのヒロインが取る行動にも不可解なものがあるし、おそらく『鉄道員(ぽっぽや)』の頃に描かれた方が表現的にももっと違った(もしくは纏まった)作品になるのだろうが(それでも当時のながやす氏の画風は完成された現在よりも惹かれるものがあるのだが)。
浅田次郎原作『ラブ・レター』が収録されていなかったのは残念だが、現在も『壬生義士伝』を描き、漫画に対する姿勢を変えず、終始一貫して描き続けるながやす巧先生に敬意を表したい。
追記…現在もなお一人で描き続けるながやす先生には、是非ともお身体には十分気をつけて頂きたいものだ。
ながやす巧氏といえば、緻密な人物・風景描写に定評があり、その作風に影響を与えた漫画家は少なくなく(初期のあだち充や秋本治のタッチにも少なからず氏の影響が伺える)、何よりもアシスタントを使わずに全てを自分の手で描きあげる完全主義者の漫画家である。
今回は画業45周年(2008年現在)を迎えたながやす氏の短編集が収録された内容となっている。
・ 中国で行われているという死者との形だけの婚礼という不思議な慣わしを描いた『幽婚』〈1991、原作:市川森一〉
・ 廃線を間近にした北海道ローカル線の終着駅で定年間近を迎えた謹厳実直な駅長に訪れる心を揺さぶる“やさしい奇蹟"の物語を描いた『鉄道員(ぽっぽや)』〈1999、原作:浅田次郎〉
・ かつて世界に挑んだ事もある落ちぶれた日本チャンピオンの中年ボクサーが再起を賭け、新進気鋭のボクサーに挑む姿を描いた『チャンピオン』〈1984、原作:史村翔〉
・ 故郷(北海道・襟裳岬)を捨て、都会(東京)へ出た男女の悲しく儚い恋愛ドラマを描いた『その人は昔』〈1971、原作:松山善三〉
『幽婚』は、“起承転結”でいうと“転結”の抜けた消化不良のような内容だった。後に役所広司主演でドラマ化(1998・9・5放送)され、芸術祭優秀賞ほか数々の賞に輝いたそうだが、ドラマはどうなのか見てみたいものだ。
『チャンピオン』は、ありきたりといっては失礼だが、まずまずの印象だった。
『鉄道員(ぽっぽや)』は最も特筆すべき作品だろう。原作者の浅田次郎氏が絶賛されるのも頷けるし、私も久しぶりに読んでみたが、ながやす氏の類まれなる画力並びに表現力によって原作の世界観を踏襲し、見事に再現(もしくは映画をも凌駕した)しており、また、ながやす氏の描く暖かみのある人物像や構成力によって物語にグイグイ引きこまれていき、読後感としては何かしら余韻の残る印象を受けた(『チャンピオン』よりもこちら(と『その人は昔』)の方を完全カラーで再現して欲しかった)。
『その人は昔』は『愛と誠』以前(メジャーになる前)の作品であり、元は1966年当時トップアイドルだった舟木一夫氏のヒット曲を基に映画化〈1967年公開、監督:松山善三、主演:舟木一夫、内藤洋子〉された作品(内容もミュージカル的な要素があり、現在の『愛と誠』に通じるものがある)である。
ただ内容的には、都会(東京)=冷たいというロジックで描かれている事に読んでいて些か抵抗があり、都会の生活に染まりながら次第に変わっていく二人の過程やクライマックスのヒロインが取る行動にも不可解なものがあるし、おそらく『鉄道員(ぽっぽや)』の頃に描かれた方が表現的にももっと違った(もしくは纏まった)作品になるのだろうが(それでも当時のながやす氏の画風は完成された現在よりも惹かれるものがあるのだが)。
浅田次郎原作『ラブ・レター』が収録されていなかったのは残念だが、現在も『壬生義士伝』を描き、漫画に対する姿勢を変えず、終始一貫して描き続けるながやす巧先生に敬意を表したい。
追記…現在もなお一人で描き続けるながやす先生には、是非ともお身体には十分気をつけて頂きたいものだ。