[コレクターズ・シネマブック]未来世紀ブラジル(初回生産限定) [Blu-ray]
(原題: Brazil (ブラジル) /1985・イギリス/監督・脚本テリー・ギリアム)
20世紀のどこかの国。最初は役所の有能な職員だったはずの主人公が、夢の中で恋した理想の女性に現実世界で遭遇したことから、管理社会の暗部で身を滅ぼして行く姿を描いている。
上流社会の出身でありながら情報省内で地位の低い部署に満足していた主人公は、母のコネによる昇進と栄転を断る。しかしその直後、ずっと夢の中に登場していた理想の女性像そっくりの人物に遭遇して後を追うが逃げられてしまい、彼女の情報を手に入れるためだけに、もう一度コネによる部署の変更を願い出る。しかしその安易な考えが災いし、主人公はどんどん反社会的な行為に迷走して行く。
情報統制によって厳しく管理された未来都市を描いた有名なカルトSF映画。全くCGの無かった時代の特撮シーンはいかにもミニチュアとハリボテのセットだが、寓話的演出によってそのチープさがむしろスパイスになっており安っぽく感じさせない(それがテリー・ギリアム監督ならではの持ち味の一つ)。
その一方、情報省内部の各フロアのセットは凝った作りで、とても巨大で深淵な建物を感じさせる。中でもクライマックスに登場する拷問部屋の空間表現は圧巻(背景画かも知れない)。またTVやコンピューターなどの機器は非常にレトロフューチャーなデザインと構造になっており、それが作品の時代性を曖昧に見せている。
たぶん三度目となる今回の鑑賞では、主人公のお坊ちゃんぶりがやたらと鼻についた。もちろん主人公のそのおマヌケな行動があってこそストーリーは次々と進展して行くわけだが、せっかく出会えたヒロインをどんどん危機に導いて行っちゃってどうするんだよ!とツッコミたくなった。ラストは極めてブラック。アンハッピーエンド。
そうそう、この映画を観たらなぜか眉村卓のSF小説『わがセクソイド』を思い出した。管理社会の中で女(セックス用アンドロイド)を連れて逃亡する男の話を。あれも最後はアンハッピーエンドだった。
もう一つ今ごろ気づいたことだが、お気に入りの映画監督にテリー・ギリアムに良く似た作品を作る人がいた(影響は少なからず受けていると思われる)。フランスのバンド・デシネ(フレンチコミック)の著名なコミック作家であり、すでに『バンカー・パレス・ホテル』『ティコ・ムーン』『ゴッド・ディーバ』という3本のSF映画を監督しているエンキ・ビラルその人である。
もしテリー・ギリアム作品が好きな人でエンキ・ビラルの映画を知らない人はぜひ一度観てみることをお勧めする。ハリウッド的な分かりやすい派手さはないし、テリー・ギリアムのようなブラックなオチもつかない、なるほどこれがフレンチコミックかと思うようなレトロで小洒落た雰囲気を持つ映画である。個人的には『ティコ・ムーン』が好き。
20世紀のどこかの国。最初は役所の有能な職員だったはずの主人公が、夢の中で恋した理想の女性に現実世界で遭遇したことから、管理社会の暗部で身を滅ぼして行く姿を描いている。
上流社会の出身でありながら情報省内で地位の低い部署に満足していた主人公は、母のコネによる昇進と栄転を断る。しかしその直後、ずっと夢の中に登場していた理想の女性像そっくりの人物に遭遇して後を追うが逃げられてしまい、彼女の情報を手に入れるためだけに、もう一度コネによる部署の変更を願い出る。しかしその安易な考えが災いし、主人公はどんどん反社会的な行為に迷走して行く。
情報統制によって厳しく管理された未来都市を描いた有名なカルトSF映画。全くCGの無かった時代の特撮シーンはいかにもミニチュアとハリボテのセットだが、寓話的演出によってそのチープさがむしろスパイスになっており安っぽく感じさせない(それがテリー・ギリアム監督ならではの持ち味の一つ)。
その一方、情報省内部の各フロアのセットは凝った作りで、とても巨大で深淵な建物を感じさせる。中でもクライマックスに登場する拷問部屋の空間表現は圧巻(背景画かも知れない)。またTVやコンピューターなどの機器は非常にレトロフューチャーなデザインと構造になっており、それが作品の時代性を曖昧に見せている。
たぶん三度目となる今回の鑑賞では、主人公のお坊ちゃんぶりがやたらと鼻についた。もちろん主人公のそのおマヌケな行動があってこそストーリーは次々と進展して行くわけだが、せっかく出会えたヒロインをどんどん危機に導いて行っちゃってどうするんだよ!とツッコミたくなった。ラストは極めてブラック。アンハッピーエンド。
そうそう、この映画を観たらなぜか眉村卓のSF小説『わがセクソイド』を思い出した。管理社会の中で女(セックス用アンドロイド)を連れて逃亡する男の話を。あれも最後はアンハッピーエンドだった。
もう一つ今ごろ気づいたことだが、お気に入りの映画監督にテリー・ギリアムに良く似た作品を作る人がいた(影響は少なからず受けていると思われる)。フランスのバンド・デシネ(フレンチコミック)の著名なコミック作家であり、すでに『バンカー・パレス・ホテル』『ティコ・ムーン』『ゴッド・ディーバ』という3本のSF映画を監督しているエンキ・ビラルその人である。
もしテリー・ギリアム作品が好きな人でエンキ・ビラルの映画を知らない人はぜひ一度観てみることをお勧めする。ハリウッド的な分かりやすい派手さはないし、テリー・ギリアムのようなブラックなオチもつかない、なるほどこれがフレンチコミックかと思うようなレトロで小洒落た雰囲気を持つ映画である。個人的には『ティコ・ムーン』が好き。
未来世紀ブラジル【字幕ワイド版】 [VHS]
テリー・ギリアムの驚異的なイマジネーションの世界。未来社会の創造が面白い。テクノロジーよりも、わずらわしさの進化が際立っており、基本的な問題は何も解決されていない。管理社会における徹底管理の元でも誤認逮捕が発生、また管理体制に対する反体制勢力によるテロ活動。人間の自由が存在するのは、タトルに象徴されるように「もぐりの技師」として生きること、体制の隙間にあるのみ。たった一匹の蝿が招くドラマは悲劇的な結末へと向かう。自由と愛を守るための必死な抵抗も虚しく、最後の砦は心の中、精神の自由のみという皮肉な結末。恐ろしくも現実的な未来を創造したテリー・ギリアム、すごいっ!!!
未来世紀ブラジル
この映画を初めて見たのは僕が東京に浪人で住んでいたときのこと。早稲田大学の近くの映画館でだったと思う。田舎から出てきてなじめなくて、友達もできず、楽しくない日々だったけど、唯一楽しかったのは、たまに気が向いた日曜日にビールを飲みながら料理を作ることだった。当時ビールのCMで流れていたのがこの映画の主題歌(?)の"Brazil where hearts were entertained in june~"だった。日曜の昼下がりにビールを片手にこの曲を聴きながら料理を作ったひとときは、今思い出しても幸せな時間だった。ビールのCMで流れてたからなんだけど、これ聴きながらビール飲むといまだに3割り増しぐらいうまく感じる。
未来世紀ブラジル [Blu-ray]
映画に登場するコードのように話がコチャゴチャしていて、一度観ただけでは内容を完全に理解しきれなかった。しかし面白かった。DVDを買ってよかった。観るたびに面白さが増す。
近未来、どこかの国で起こるブラック・ファンタジー。
情報局員、サム(ジョナサン・プライス)の身に次々と降りかかる現実とも非現実ともつかない出来事たち。これにテロリストのタトル役、デ・ニーロが持ち前のアクの強さで絡む。
タトルがテロリストで、たまたま名前が似ていたバトルが逮捕、処刑されるなど皮肉をタップリ効かせながら物語はエンディングに向けて疾走する。
後半活躍するトラック運転手役ジル(キム・グライスト:天使と二役)のキャラクターも素敵だ。
テリー・ギリアム監督自らが「悪夢」と形容するほどのイメージの氾濫とキックに溺れてしまいそうな作品であった。
近未来、どこかの国で起こるブラック・ファンタジー。
情報局員、サム(ジョナサン・プライス)の身に次々と降りかかる現実とも非現実ともつかない出来事たち。これにテロリストのタトル役、デ・ニーロが持ち前のアクの強さで絡む。
タトルがテロリストで、たまたま名前が似ていたバトルが逮捕、処刑されるなど皮肉をタップリ効かせながら物語はエンディングに向けて疾走する。
後半活躍するトラック運転手役ジル(キム・グライスト:天使と二役)のキャラクターも素敵だ。
テリー・ギリアム監督自らが「悪夢」と形容するほどのイメージの氾濫とキックに溺れてしまいそうな作品であった。