恥や誇りを主張しない自尊心、古き良き日本人を知る!おすすめ度
★★★★☆
山本周五郎の原作に黒澤明の脚本という、誰が訊いても「最後の黒澤作品」
という印象を拭えない作品ですが、最近「博士の愛した数式」まで観て、
小泉堯史監督の作風を理解してみると、意外にも当時観たときには、処女作
として黒澤明へのレクイエムでありオマージュであると感じていた、全体に
漂う静かでゆったりとした時間の演出や、丹念に記録されたリアルな雨の
描写や繊細な山河の映像は、黒澤明へのそれではなく小泉堯史監督自身の
作風であることに気が付きます。
つまり、この作品は話題性としてのビックネームやキャッチフレーズで翻弄
されてしまいがちですが、処女作にして今なお貫かれている、自然の流れに
逆らわない、人間の機微をみごとに映像に定着させている精緻な作品である。
これをゆったりとした気持ちで眺めていると、ここに登場する様々な立場の
人々、不自由だらけで決して幸福ではないけれど、その思いは説明などなく
ても理解しあえる情緒で繋がっているという安心感。人情を押付けない謙虚
な自尊心の在り様など、古き良き日本人を見て、少々嬉しくなってきます。
題名どおり晴れ晴れとする映画おすすめ度
★★★★★
題名どおり晴れ晴れとした気持ちになりました。
主演の寺尾聡さんは、思いやりがあって剣の腕も確かだが不器用な浪人を
宮崎美子さんはそれを支える妻をうまく演じています。
私は黒澤明監督作品はまともに見たことがなかったので
これを機にみていこうかと思っています。
見たことがある方にとっては期待しすぎての酷評なのではないでしょうか?
逆境の時こそ確かな夫婦愛!おすすめ度
★★★★★
この作品は、決してアクション系ではありません。
人情味溢れるほのぼのとした、癒し系です。
万年浪人三沢伊兵衛(寺尾聡)は剣の腕は超1流なのだが、如何せん人情に厚すぎ、しかも女房(宮崎美子)に頭が上がらない。
そんな伊兵衛の腕と人格に惚れた殿様(三船史朗)が、藩を去り行く三沢夫妻を馬で追っていくシーンは中々感動的。
夫を信じて苦しい旅も厭わない妻「たよ」の「ずっとこのままでようございます」の言葉に、夫婦は信頼関係とお互いの愛情が全てということを教えてもらった気がします。
夫婦喧嘩をしてしまったそこの貴方、この作品をご夫婦そろって見ましょう!
時代劇キライ!
おすすめ度 ★★★★☆
ボクはこのタイプの時代劇がキライです。
何が面白いのかさっぱり分かりません。
こんなボクでしたが、これは面白かった。チャンバラなど殺伐としたシーンもあるんですが、見終わったときホンワリした気分になりました。
最後の宮崎良子の啖呵も良い。素直に夫婦って素敵だなぁって思えます。
時代劇も素晴らしいと思わせてくれる一本でした。
概要
黒澤明が生前から温めていた企画を、黒澤組の助監督小泉尭史の手によって映画化。原作は山本周五郎の短編。享保時代、心やさしい三沢伊兵衛(寺尾聡)は剣術の達人ながら人を押しのけることができず、仕官の口もままならない浪人生活。妻たよ(宮崎美子)と共に旅を続ける。
雨の続く季節、川どめにあった彼らは、とある安旅籠に長逗留することになった。旅篭には行商人や農民、飯盛女など、庶民の活気にあふれている。三船史郎の殿様ぶりも、そのユーモラスな豪快さで父親の故三船敏郎を思わせて微笑ましい。寺尾の剣さばきの確かさ、宮崎の貧しくとも気品のある立ち居振る舞いの美しさ、旧黒沢組の総力を結集した美術の見事さ。まさに黒沢の意図したとおり、見終わってさわやかな気持ちになる作品だ。(堤 昌司)