椿三十郎は映画中で随分簡単に大量の人を殺めているので、実は結構残酷なシーンがあるわけですが、そこは映画と割り切って楽しむのがいいのでしょう。但し、このような三十郎はやはり「抜き身の刀」であり、宮仕えには向かないというのはよく理解できました。
最高傑作おすすめ度
★★★★★
私にとっては黒澤明作品の中でベスト作品です。
大ヒット作『用心棒』の続編として作られた映画ですが、
内容的には用心棒よりもレベルの高い仕上りで、
黒澤映画中であらゆる面で最高の完成度を持った作品だと思っています。
上映時間は96分、黒澤作品としては短いですが、
シーン、セリフどれをとっても全くムダのない完璧な出来の映画です。
笑いは随所にあり、 三十郎が十数人をあっという間に
切り倒していく壮絶な殺陣もあります。
登場するのは
椿三十郎:三船敏郎
(前作『用心棒』では名前を聞かれて目の前に桑畑が拡がっていたので
「桑畑三十郎」と名乗りましたが
今作は隣の屋敷に椿の花が咲き乱れていたので
「椿三十郎」と名乗り 「もうすぐ四十郎だがな」とセリフは続きます。)
敵役の室戸半兵衛:仲代達矢
椿三十郎に助けられる若侍達のリーダー井坂伊織:加山雄三
などです。
黒澤の白黒映画は本当に美しい。
白と赤の2種類の椿の花がこの作品ではクライマックスで大事な役割を担います。
ラストの三船と仲代の決闘シーンは是非、コマ送りで見てみて下さい。
黒澤さんの女性観の一面が垣間見える気がします。おすすめ度
★★★★★
『本当に 良い刀こそ さやの中 抜き身抜かせぬ たぬき代官』
ユーモア+殺陣!
おすすめ度 ★★★★★
黒澤映画の魅力は脚本のすばらしさだとおもうが、「椿三十郎」のラストの殺陣は、脚本に”筆でも書けない”と書かれており、撮影に当たって、三船敏郎と仲代達矢に別々の殺陣師がついて撮影されたそうです。撮影の見物人のなかには三船敏郎が仲代達矢を実際に切ってしまったと勘違いするほど迫力があったと黒澤明が回顧していたが、凄まじいまでの迫力。全編を通しての春風のようなトーンを変えてしまうほどの、この迫力を超える殺陣が今後生みだされることはないでしょう。
そもそも企画自体、原作の山本周五郎作「日々平安」を弟分の堀川弘通のために脚色していたのを、会社側からの要望により、黒澤自らの撮影が決まり、黒澤流にアレンジされたのだが、この企画を堀川が撮っていたら、と思うとそちらも見てみたかった(主役はフランキー堺が想定されていたそうです)。
概要
『用心棒』大ヒットの翌年に製作された続編的要素をもつ作品。お家乗っ取りに暗躍する悪家老一味と、血気盛んな若侍たちの確執に、(今回は椿と姓を名乗る)三十郎(三船敏郎)が巻き込まれていく。
原作は山本周五郎で、黒澤明監督も今回は肩の力を抜いて、ホノボノとした明朗感を大切にしながら演出。しかしその中で、正義の城代家老の妻(入江たか子)に「あなた(=三十郎)は抜き身の刀のよう。でも本当にいい刀は鞘に収まっている」とサラリと言わしめ、力をコントロールすることの大切さをさりげなく説いているあたりもうまい。クライマックス、敵方の室戸半兵衛(仲代達矢)との一瞬の居合対決は、今でも語り草となる凄絶なシーン。当時、三船の殺陣は、もはやフィルムのコマに刀が映っていないほどすばやいものだったと言われている。(的田也寸志)