寸分のスキもない仕上がり…おすすめ度
★★★★★
完璧主義のご両人の最高傑作と呼ばれる本作、聴き所は満載！本作のレコーディングについての二人の解説DVDが出ましたが、何度も焼き直しながら、練り直しながら作り上げたことがよく分かってSTEELY DAN好きにはウラ側をバラしてくれたような気分に浸れるのですが、そこでもやはりJAY GRADON大先生の“PEG”でのソロ(確かにぶっ飛んではいるのですが、彼らしいソロかと言われればどうかなという個人的な印象、こんなソロ誰も弾けませんが…)、そしてかの故JEFF POCARO大先生をして『絶対あんなグルーヴは誰にも出せない』と言わしめたBARNARD PARDIE名誉教授がこれ以上ないリズムを叩き込む“HOME AT LAST”を実際に楽器をやる私としては特に聴き所としたいです。その意味では次作の『GAUCHO』の“BABYLON SISTERS”も相当なグルーヴ、彼でしかなし得ないノリの曲になっており、全体的にも本作よりリラックスしたムードがあり聴き易いです。併せて聴いてみることをオススメします。
究極のスタジオ・バンド
おすすめ度 ★★★★★
スティーリー・ダンの最高傑作と呼び声高い歴史的名盤『彩（エイジャ）』。
初期は普通のロック・バンド形式でしたが、作品を重ねていくごとにその形態を脱し、ドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーの理想とする楽曲作りのために最適なセッション・プレイヤーを迎えてアルバム作りをし、ライヴ活動は全く行わないという、スティーリー・ダンならではのスタイルをつくり上げていきました。そして、本作『彩』でその頂点を迎えたと言えます。
内容は当時流行ったクロスオーバー、フュージョンの極致といったもので、“これぞＡＯＲ！”といった雰囲気の、落ち着いた大人のロックといった印象です。初期がウエスト・コーストとニューヨークを折衷したサウンドだったのに対し、本作は完全にニューヨーク的な都会の洗練された音楽に仕上がっています。ただ、１度聴いたくらいではこの素晴らしさは分からず、何度も聞き込む内にその魅力が分かっていき、やがては抜け出せない程どっぷり浸かっているというスルメ的な魅力をもつ作品です。この作品が大ヒットしたのですから、その時代まだ産まれてもいなかった私にとっては、“本当にいい時代だったんだなぁ”と羨ましく思うくらいです。
本作はその年のグラミー賞で最優秀録音賞に輝きましたが、受賞はそれだけに止まっています。というのも、同年イーグルスの『ホテル・カリフォルニア』やフリートウッド・マックの『噂』等の大名盤が発表されていたためです。そういった意味では不運とも言えますが、改めて凄い時代です。
フュージョン・ファン、ＡＯＲファンの方はもちろん、ジャズ好きの方にもお薦めの一枚です。
