あいかわらずいい話(^^)おすすめ度
★★★★☆
前作を読んだのは、7〜8年前のサラリーマン時代。
筋は大方忘れてしまったが、主人公の井沢とヒロインのアイリーンが
浅草の四重の塔を逃げ回るシーンだけ、なぜかくっきりと覚えている。
前回は中国革命軍の為に、日本軍から詐欺で武器を奪うストーリー
だったが、今回のターゲットは袁世凱。彼を詐欺で騙して失脚させる
ストーリー。殷時代の遺跡の発掘シーンがあったり、あいかわらず
スケールの大きいながら、しっかりとしたリアリティ。
相棒の関虎飛もいい味を出している。
「恐ろしいのはひとつの生き方、ひとつの考え方しかないと教えこまれる
ことだ。ひとはたやすく統治者や指導者に騙される。
煽られ、感情にまかせて行動する。だが、私は子どもたちにはそうなって
欲しくない。きちんと自分で考えること、それが重要だ」
寡作な作家なので読むのは久しぶりだが、あいかわらずいい話を書いている。
心の磨耗してしまった部分を、少し埋めてもらったような気がした。
激動の中国。狙いは袁世凱。舞台は大きいが…おすすめ度
★★★★☆
前作の圧倒的な面白さに比べ、本作は詐欺のトリックも人間的な感情の表現も実に淡々としていると感じる。
主人公伊沢が少し歳をとり、革命軍も理想と情熱だけで動いていた古い組織から、
政治的な新しい組織へと変革しているのだが、
前作から時間がたっているので、やっぱり忘れている部分もあり、伊沢や彼を取り巻く脇役達をもう少し掘り下げた描写があれば尚良かった。
また、愛鈴がシャミールと付き合っている設定で登場した意味があったのか分からず、
その後シャミールと別れ、伊沢の元に来た行動も解せなかった。
その部分の感情をもう少し盛り上げて描写して欲しかったと思う。
しかし、自分はこのタイプの作品が好みなこともあるが、一気に読破できる面白さは充分。
次の展開が気になりサクサクとページが進む!
終わり方も第3作に続くであろう気配があった。
意外性は薄れたが安定感は抜群おすすめ度
★★★★★
【T.R.Y.】から4年経った、という設定から物語は始まる。前作についてあらすじは記されてはいるものの、人間関係についてハッキリと明記されてはいない。だから、まず【T.R.Y.】を読んでからこの本を読む事をお勧めしたい。
登場人物達の「革命への情熱」や「人間関係の愛憎」といったものは、前作に比べて薄れている。良くも悪くも大人になった印象。人間のギラギラした部分やハラハラドキドキする展開は減った。アニメ【ルパン三世】的とでも言おうか、安定した土台の上にスリルが乗っかっている。もう少し意外性はあって欲しかったが、エンターテイメントとしてのレベルは高い。安心して読める1冊と言えるだろう。
信じたいものを信じてしまう人間
おすすめ度 ★★★☆☆
この作品に一貫したテーマがこの「信じたいものを信じてしまう人間」の哀れさだと感じた。そういう点で面白い。
しかし、布石的な説明が多すぎる。400ページを超える中、馴染みにくい「中国人の名前」も登場するので、250ページを超えていくまでは退屈。前作「TRY」と比べると、スピード感は無くなったもののページを割いているだけにわかりやすいかもしれない。