フーテン―シリーズ黄色い涙青春残酷物語
下手な映画を観て帰り食事でもして。
でいくらかかると思います?
それに比べてこの「フーテン」は3000円以下で永遠の芸術を手に入れる事が出来る。
しかも何度でも味わえる。
こんな贅沢な事があるだろうか?
良質な娯楽は芸術と呼ぶ事にしている。
永島慎二のこの作品はそこまで昇華した永劫に残る価値ある芸術的遺産です。
漫画家残酷物語・完全版(1) (その他)
待ちに待った完全版、前回の刊行時には結局2巻までしか出ず、3巻目はいまだ幻のままです。
今回は最後の3巻目まで同時に発売され、カラーページも完全復刻ということで出版される前からとても楽しみにして購入したのですが、購入後気になったのが、なにをもって完全版と称しているのかが曖昧なまま放置されていることです。
前回の刊行時、新たに発見された原稿を使用しており、それらは〜ページに使用している、という詳細な説明があったのですが、今回の版はその発見された原稿、というものに触れている説明はなく、3巻目に普通の解説文が書かれているのみです。
その発見された原稿が今回の版で使われたのかどうか等全くわかりません。
今回完全版と称するのであれば、何故今回の版が完全版なのかという詳細な説明が欲しかったと思います。
あと、気になるのが、他の方も書かれていますが、以前の版(数種類ありますが・・・)、と比べて今回の版は、線・・・以前はくっきりとしていた線がなんだか中途半端にかすれているというか、なんだか全体的に印刷の状態が悪いように思えます。
特別収録の「星の降る夜」にしても、僕の持っている青林堂、講談社漫画文庫、ちくま文庫の3種類の「フーテン」の中でいちばん状態が悪いようです。
まあ、この作品はずっと「フーテン」に入ってて、「漫画家残酷物語」の中に含めるのははじめてのことなのですが、せっかく完全版と称する今回の「漫画家残酷物語」に含めるのであれば、もうすこしいい状態のものを含めることはできなかったのかなとも思います。
この本を購入する人は、以前出版された「漫画家残酷物語」をすでに持っている方が多いのではないかと思います。
だからこそなのですが、「完全版」と称するのであれば、もう少し細部までこだわって欲しかったと思います。
そのあたりがとても残念です。
本の内容から考えると星が5以下というのは考えられないのですが、上記のことがありますので、今回は星をひとつ減らすことにしました。
本当に残念、次回?に期待します。
黄色い涙
いつの時代にもいると思うのです、具体性がないのにけっこうマジメに夢を追う若者たちって。そんな若者たちへの愛情があふれている作品です。夢に真剣なのに計算力が低くて、それでいて情に厚くて、かといって保守的でなくやや反社会的な意識は持っている。こんな若者が多かったなあ、あのころ。そういえばあのころはみんな薄汚れた安下宿でろくなもの食べてなかったくせに、酒と本はケチらなかったような・・・。なお、この作品のテーマは、山本周五郎の虚空遍歴に驚くほど符合しているように思えます。
漫画家残酷物語―シリーズ黄色い涙 (1)
先日、この方の訃報を耳にした。残念である。
私はリアルタイムで読んだ世代ではない。例えば近い世代のつげ義春などを読み、面白いと思ったがその面白さは当時の読者が感じたものとは違うのだと思う。
永島漫画では、今を生きる若者の感情を描いたことがよく語られ、文にもなっている。私はその「リアル」から遠い。では何を面白がったのか?歴史的価値だろうか。当時と今の若者の感性の類似と相違だろうか。
つげの作品は私にとって淡々とする流れが心地よいのであり、それだけで十分である。思想的背景をいくつか学び、面白いと思ったが、それがなくてもつげ作品の面白さは変わらずに在った。
永島は淡々というよりは、ぼんやりである。ぼんやりとは全くの主観である。上手い言葉が見つからないのである。でもいいのである。この空気を人に説明する必要性を感じていなかったからである。今回レビューを書くにあたって、上記のようなことを書いてみたが、やはりその本質、つげでいうところの淡々については、わからないままである。思想や象徴などのウラの意味については考察も可能である。が、過ぎ去った当時の世界を、朝焼けの新宿の肌触りを感じることは不可能であると思うから、もう探すこともできないのである。作者がいなくなったから、本当に消えてしまったのである。でもかまわないのである。
これで、いいのだ。おそ松。