系図
昨年、高田渡逝去の報を聞いたとき、
真っ先にこのアルバムの「告別式」が頭の中を巡りました。
「告別式」は彼自身の詞ではありませんが、
この題名にあの軽快な音を乗せた彼ですから、
この曲同様、死をもあまり気にせず、
今も変わらずひょうひょうと、
どこかで酒を飲んでそうな気がします。
この盤の解説にもありますが、
彼自身による作詞が少ないアルバムですが、
選詩や彼の典型的なコード進行は健在です。
他の高田渡のアルバム同様、
高校時代の通学時に毎日毎日、
何度聴いたかわからないアルバムです。
高田渡と父・豊の「生活の柄」
高田渡が「なぜ高田渡であったのか」を知りたい人はたくさんいるだろう。
この本は、そのことについて「父」という今までになかった視点からの
ひとつの解答を与えてくれる良書だと思う。
「家族への了承」という段取りを踏んでいないのであれば、
それは著者、出版社の大きな過失であるが、
本の内容は家族の名誉を傷つけるものではないと思うし、
そのことで、この本の内容が貶められることはない。
それほど、綿密な取材に基づいた確かな分析がなされている、
何より、高田渡とその父への、そしてその家族への愛に溢れた本だと思う。
高田渡読本 (CDジャーナルムック)
高田渡さんが亡くなって、はや2年経ちました。彼の仲間や友達が高田渡を語っています。高田渡の人生観を、彼の友人や仲間に教えてもらった気がします。高田渡さんの全てはわからないかもしれませんけど、彼を少し知った気になります。
CDガイドの高田渡の音盤は出色です。当時の音楽雑誌に載った記事も出ていてお勧めです。
プロポーズ
松山千春がやっていたNEWSレコードから発売されたためなのか,なぜか今まで復刻されることのなかった名盤がやっと復刻された。
このアルバムが発売された当時,私は中学生で2800円のLPレコードなんて,そうそう買えるわけはなかったけど,出入りしていた楽器屋で村上律(多分)と2人だけのツアーのチケットをもらって,聴いた“コスモス”や“HELP!”,そして“日本海が広がっている”にはやられてしまったものです。
このレコードでは,当時の音楽状況を反映して,結構Newwaveなアレンジがされているのですが(特に“HELP!”),加川良のあのネバっとした唄い方は少しも負けていません。しかし,ギター1本の,あぁ加川良だなぁと思わせる“通りゃんせ”も素晴らしい。もちろんボーナストラックの2曲も素晴らしいです。
これを逃すと,また手にすることができないかもしれないので,加川良が好きだった人も,知らなくても日本のフォークソングに興味のある人は買って損はないと思います。
「働いて,働いて,こんなに曲がっちまってさ。でも覚えてる。今日,君の誕生日(誕生日)」だなんて,今時の軽すぎる唄では聴くことができないですよ。
ぼくが出会った素晴らしきミュージシャンたち
音楽が消耗品になる前、ポピュラー音楽を文化として根付かせようとしていたころのお話。ただのインタビュー集や回顧録の枠に入る本ではない。
ぼくが著者の岩田さんの名をはじめて知ったのはBeatSoundというロックに照準を合わせたオーディオ誌だった。それまでのオーディオ誌と一線を画した記事の中でも和田博巳氏と岩田氏の記事には強く引かれた。今から思えばお二人がただの傍目評論家ではなく音楽業界の渦の中に生きていた人達だったからなのかも知れない。BeatSound誌がオーディオ誌からアルバム紹介誌に変わっていくにつれて岩田さんの記事は少なくなっていったけれども。
デジタル世代ならこの本を読んでも意味がわからないだろう。でも貴方がヴィニール盤のことを覚えている世代ならこの本を手にしてみてほしい。そして、その夜はテレビを消して、アルコール、できればちょっと背伸びした金額のワインを傍に置き、昔好きだった曲を聴きながら、この本を読んでほしい。スピーカーがJBLなら最高です。岩田さんは自分からみたら親と変わらない世代のはずなのだが、なにか兄貴の話を聞いているような安心感を覚える。ポピュラー音楽の存在意義は、暮らしが少し彩られ、単調な生活がちょっとだけ豊かになることなのだろう。