星を継ぐもの 3 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)
3巻の冒頭は、ガニメアンが実験場としたイスカリスから脱出する場面から始まります。原作では淡々と済ませてましたが、ここまで壮絶な出来事だったとは。そして議論を経て愈々明かされるランビアン=ジェヴレン人の正体、ブローヒリオ閣下の御尊顔を拝む時がまいりましたが、おいおい(笑)。原作を読んで居た折には地球を遥かに凌駕する技術力を持ち如何にもキリッとしたイケメンを想像していたものですが、そーきたか、というか、北のランビアンと南のセリオスを地球の人類史にそう準えた所は感心させていただきました。ただ、昨今の説でいうと外見上ホモサピエンスとは殆ど差異が無い、一説には同じ服を着せて街中を歩かせても違和感が無いのではなかろうかとも言われる所ですので、こんなにガタイがイイ容貌でいいのかと突っ込み。まぁ、平和委員会の面々がゴツイ理由は分かりましたし、区別をつける為に敢えてそう描写したものでしょうか。
続いてはホモサピエンスとガニメアン、それぞれの生い立ちが生物史を交えて語られますが、その中であのガニメデに墜落した宇宙船の廊下に転がっていたホモ・エレクトス「シリル」さんのしでかした事について想像が及びまして、そんなベタな展開あるかいな、とも存じましたが、これも糧にして人類の本性を説明するのは成程、と存じた次第。それにしても、例の謎の酵素の研究結果からシミュレーションでそこまで残酷な結果を導き出して描写出来るものかというのは、やはり現在よりは進んだ未来の技術だからでしょうか。
後半は修理を終えたシャピアロン号が招待に応じて愈々地球を訪問します。途中で「ミネルヴァのなれの果て」小惑星ケレスに立ち寄ります。原作では冥王星だったのですが、話の流れや説明の都合から妥当でしょうか。ここで不意の攻撃、地球に到着してからもまた攻撃がありまして原作に較べると随分とアグレッシブな展開となります。ケレス攻撃に使われた兵器の表面の描写にはゾっとする次第。その間にもガニメアンは人類との交流を深め、裏で地球を狙う者の陰謀に科学的推論と、人類の知恵とガニメアンの本能で迫っていきます。が、その元凶に思いを巡らした時に最早これ以上介入すべきではないと察したガルースは、薄弱な根拠を理由に地球を離れる決心を下す。地球の思い出を語る子供のセリフが泣かせます。
原作で言うとだいたい「ガニメデの優しい巨人」の終わりまでを消化したことになるでしょうか。原作の科学的議論も3巻ではそれなりに追い掛けていますので、読み辛いところもあるやもしれませんが略しちゃうと話になりませんのでやむを得ないでしょう。追加設定としてガニメアンの歯に纏わる癖や言い回し、六本の指を駆使したゼスチャーなどもちとニヤリと。或いは「第三の眼」についてもこの際はそうゆう設定があるのかと。そうそう、原作を読んで居た時にはうら若いと思っていたシローヒンさんが実は...という驚愕の事実はおいといて。説明の都合上でしょうか色々と構成も変わっている所もありますし、突っ込みたいところもございます。特にランビアン=ジェヴレン人の正体の設定については原作者が存命ならなんと仰ったか、は気になりますが。やはり絵になると宜しいですね。今更ながらこの大作を絵にしようと決意された氏に感謝したい次第。
THE SEA OF FALLEN BEASTS 滅びし獣たちの海 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)
星野さんの世界観が広がる作品群だ。
宇宙(そら)よりももしかしたら海の方が深遠な世界が広がっているのかもしれない。
地球とはそういう惑星なのだ。
「星を継ぐもの」で現在注目中だけれども、過去の作品群のクオリティも高すぎるくらい高いのだ。
残像 (MF文庫)
中学生の頃に夢中になって読み耽った、あの天才SFマンガ家《星野之宣》氏の、傑作短篇集です。収録されているのは、「美神曲」、「残像」、「世界樹」の三編です。どれも傑作ですが、特に最後に収録された「世界樹」という短篇には、絶大な影響を受けました。この《世界樹/ユグドラシル》というイメージは、今でも、私の思想の《根幹》として存在しています。この短篇集は、今ではメディアファクトリーという出版社から、さらに短篇を三編追加して、文庫版として再発行されているみたいなので、興味のある方には、そちらをオススメします。面白いですよ。
血引きの岩 (ソノラマコミックス)
旧朝日ソノラマ、現朝日新聞出版社刊の『ネムキ』に2002-2004年、非定期掲載された連作短編「血引きの岩」シリーズ4編を中心とした短編集です。
内容は日本神話を基に黄泉の国の封印が開き、死が日本列島を席捲する危機を神に選ばれたと思しき女性が防ぐ伝奇ホラーアクションです。
心の傷を隠しながら他者を助ける為に奔走する慈母的女性キャラクター、御巫(みかなぎ)が魅力的です。
星野氏がスターシステムを発動し、ブルーシティ・シリーズのドクター・ジェノサイド、ヤマトの火シリーズの広目と同系の美形キャラクターが主人公を助ける法力を持った僧侶「慈厳」として久々に登場します。
作者のホラーに関する考えと自省を読む事が出来る前書き「著者のことば」付きです。
他の収録作は以下の2編。
ぶんか社ホラーM1995年掲載「マレビトの仮面」
潮出版社COMICトム1993年掲載「土の女」
単独で読むと充分恐く面白い作品ですが、氏の素晴らしいデッサン力と硬質のペンタッチがおどろおどろしいホラーには少々不向きで、損をしています。
但し「宗像教授伝奇考」等の伝奇推理アクションに超現実的な怪異や物の怪を加えた内容は充分水準以上の出来です。
第3話の冒頭、死の世界の黄泉醜女達による飛行機への襲撃シーンのアクションは見事です。
紙質は良いがカバーが付かないコンビニコミック形式で、このサイズ、厚さの単行本としては廉価でした。
LEGEND OF GIANTS 巨人たちの伝説 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)
星野さんがホーガンの世界を描きたくなった理由がよく分かる作品群だ。
地球の氷河期というのは、その克服方法がSF作家の想像力をかき立てるのだと思う。
20年以上の前の昔の作風だけれども、描かれている世界は素晴らしい。
やはり宇宙物を描かせても超一流の作家なのだ。