Some Great Reward
People Are PeopleやMaster And Servantのノイバウンテンなどに影響を受けたハンマービートの悦楽。
そしてデビュー時を思わせるようなSomebodyなどの叙情。両者が絶妙なバランスを保ったテクノ史に名を残す決定的名作。
ツアー・オブ・ザ・ユニバース-ライヴ・イン・バルセロナ- [DVD]
これの前のツアーを納めた"Touring the Angel"同様、シンセとドラムにサポート・ミュージシャンを入れて全曲生演奏バージョンにアレンジを変えて演奏しているが、今回も素晴らしいデキだ。特にPeter Gordeno (Key)が繊細なシンセ・ピアノでアレンジをしたMartinボーカルの数曲は全く別の曲として生き返っており、会場も沸きに沸いている。
とにかく会場がクソデカイため、後列の人々は肉眼でメンバーを見るのは絶対に不可能だ。このためか、背景のビデオアートが今回も色々と主張しているのだが、残念ながらこれまでのライブでもビジュアル面を手がけてきたAnton Corbijnによる作品にしては、デキが今イチ宜しくなくて目に煩わしい。このほか、Daveのノドの調子が余り良くなくて、かなりMartinに助けられている。カメラワークでピントを外したショットが多用されるのもわざとだと思うが、あんまり効果的ではない。
以上の難点を抱えた作品であるにも関わらず、選曲の新旧バランスの良さ、演奏と会場の雰囲気の素晴らしさにより、星付けは満点にした。それにしても、海外版では出ているのに日本版でブルーレイが出ないのは何故か。
The Wedding Singer Volume 2: More Music From The Motion Picture
映画とおなじく、ちょっとださくてなつかしい(笑)、80年代の曲が満載です。カルチャークラブの曲ではあのジョージの顔が思い出されて笑えます。14曲目のおばあちゃんのラップもかわいい。他にもポリス、コステロ、デヴィッド・ボーイなど大物アーティストずらりで結構楽しめると思います。最近のお洒落なカフェ系ミュージックより、実はちょっとひとくせありそなB級が好き!って方、是非どうぞ。
Music for the Masses (Bonus Dvd)
あたしは実は幼い頃から、洋楽に馴染んでいるとはいえ、実はデペッシュを聞き逃していた。あたしが彼らの曲を聴き始めたのは90年代に入ってから、「I Feel You」にはホントどきもを抜いた。それから彼らの作品なら何でも聴きたいという衝動に駆られ、過去の曲を貪り聴いた。そしてあたしなりに発見した…デペッシュは表層的「黒さ」から精神内部の「黒さ」へと深化していったのだと。このアルバムではまだ表層的に黒い。デイヴは「このアルバムを作り終えて、今までの時代の終焉を迎えたんだ」といっているが、あたしなりに解釈するとこのアルバムを作り終えてから精神内部の黒さへと移っていったのではないか。だが、このアルバムには来るべき新たな黒さが滲み出している。その意味でこのアルバムは表層的黒さの臨界点と同時に精神内部的黒さのグランド・ゼロではないか。デペッシュのこのチャレンジには今もエールを送る。
Black Celebration
世間的には『ヴァイオレイター』がこの人達の最高傑作ということになるのだろうが、個人的にはこのアルバムが一番好き。
「肝心なのは情欲、そして信頼、かつ僕達が築き上げてきたものを粉々に打ち砕いてしまったりしないということ。それら全てとその他諸々の事柄が僕達を結びつけている。」と歌い上げる "A Question Of Lust" 。けして大ヒットした訳ではないが、このアルバムからセカンドシングルとなったこの曲こそが自分にとって一番好きなDepeche Modeの曲である。
前作では宗教や国家や戦争といった社会的なテーマを扱った楽曲が目立っていたが、このアルバムでは「僕とあなたとの関係性」、とりわけ単純に恋愛とは言えないけれどそこから大きな歓びを引き出すことのできる関係性というものに焦点が当てられている。そういった官能性やエロスの中に自らの内なる欠落を補完してくれるスピリチュアルな高揚感を見出そうというマニフェスト、それこそがM・ゴアが現在に至るまでDepeche Modeの音楽を通じて追求してきたテーマであり、彼という人間の核なのだと思う。
このアルバムから彼らの音楽が暗くなった、あるいはゴスっぽくなったというのは事実だと思う。しかし、それは綺麗言では済まされない自らの業の深さや背負っている闇の部分と正面から向き合って、そこから歌を紡ぎだしていこうという姿勢の顕れだと思う(前作に顕著だった思春期的な甘さや、高みから世間を見下したかのような若者特有の安易なエスプリはこのアルバムにはほとんどない)。徹底してペシミスティックな歌詞と、どこかしらぬくぬくとした叙情や耽美主義的なロマンチシズムを感じさせるメロディの対比がクセになる快作。このアルバムの後彼らの音楽はどんどん重さと固さを増して強面になっていくのだが、このアルバムではそこまで防衛的でも攻撃的でもなくまだまだ隙がある。そこが魅力。