再ビ云フ,乃木ハ愚将ニ非ズト. おすすめ度 ★★★★☆
司馬遼太郎が 坂の上の雲 と 殉死 に於いて乃木を愚将かつ最期において残虐だったと主張したのに怒った長州出身の老作家が,80歳を超えて再び試みる司馬への反論.さすが歳は争えず文章に張りは失せたが,明晰さと鋭さは失せない.史料の使い方に明らかな利があって,反論は成功した,と見た.それにつけても乃木はなぜ旅順要塞攻城など,明らかに大きな犠牲が出るはずの役ばかり割り当てられたのか,不運の人だった.しかし,愚将名将論を超えて,史上稀な数の死者,傷者を出した事実は動かせない.そうしてこの勝利が後の軍の暴走の基礎となったのも歴史的事実である.日露戦争自体が私に感じさせる遣り切れなさの所以である.
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