リスボンの小さな死〈上〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
第二次大戦が始まった頃,ドイツの連結器製造会社を経営するフェルゼンは,ナチ親衛隊の名誉隊員にされ,ポルトガル語に堪能なために,戦争遂行に不可欠なタングステンの買い付けのためにポルトガルに派遣される。フェルゼンが荒っぽい手段でタングステンを集めてドイツ送りながら,次第にポルトガルに深く関わっていくという話と,現代のリスボンの女子高校生殺害事件のコエーリョ警部による捜査の過程が同時に語られていく。前者は三人称,後者は一人称である。ポルトガルの現代史と何重もに絡まりあった復讐,それに繰り返される裏切りを柱にしている。コエーリョ警部は,着実に捜査を進めていき,犯人を捕らえる。しかしながらそう簡単には決着はつかない。現代の事件が,過去の長い影を引きずっている!というタイプで,大きな流れから細部まで注意が行き届き,入念に構成されたよくできたミステリである。
アインダ~リスボン・ストーリー 映画「リスボン物語」サウンドトラック
ヴィム・ヴェンダーズ監督の映画「リスボン物語」のサントラです。この映像とマドレデウスの音楽、そして歌姫テレーザ・サルゲイロの黒髪に魅せられて、私はリスボンへ旅立ちました。アルバム「アインダ」を聴きながら旧市街の坂道を散策したり、狭い石畳の道路を走る路面電車の車窓から眺めて聴いたり。ひとり旅だった私には彼らの音楽が旅の友人でした。「アルファーマ」をアルファマの街中で聴いてみて下さい。
リスボン物語 [DVD]
録音技師ウィンターは映画監督の友人にリスボンに呼び出される。待てど暮らせど戻らぬ監督。ようやく出会えたと思ったら,自分の目を通して撮った映像は死んでしまうからと撮影を止めていた・・・。
ヴェンダース自身の,映画の原点に立ち返ろうとする心の軌跡を描いたような作品。マドレデウスの限りなく澄んだ音楽とリスボンの眩いばかりの景色が,光と影を行き来する映画世界を心地よいものにする。
本作を観終えた時,魂が吹き込まれたのは彼等だけではなかったことに,きっと気付くはず。
クラシックの殿堂
静かな曲、激しい曲、有名な曲、無名の曲、それぞれが何の脈絡もなく2枚のディスクに盛り込まれています。38曲も入っていれば当然知らない曲が幾つかあるので、添付された曲ごとの簡単な解説本が役に立ちます。
クラシック音楽の「よく聞く部分」だけを楽しみたい人には適していると思います。
目当ての曲を聴くために購入したら、別の曲が気に入る、というオムニバスのいいところを堪能できるはずです。
リスボン物語 (ユニバーサル・セレクション2008年第5弾) 【初回生産限定】 [DVD]
録音技術者の主人公が、友人の映像作家から、古い撮影スタイルの作品に音楽をつけて欲しいと頼まれて、リスボンに赴くが、なかなか友人と会えない。
けれども、友人が撮影したフィルムを目にすることができた。
そこで彼は、その映像に音をつけるべく、昔ながらの録音スタイルで音をつけたり、みずからヘッドフォンとマイクを持ってリスボンの街を録音して歩きながら、友人を捜すのだが・・・
ヴェンダーズは、単純に好きな映像作家の一人です。
その中でもこの作品は「音」を主題にしている感じがして好きです。
プロであれ、アマであれ、録音に携わる人にとって、
「聴こえる」という当たり前の感覚に対して、
単純に驚きと喜びに、日々接していると思われます。
アインシュタインは、死ぬということを
「モーツワルトやベートベンが聴けなくなること」
と簡潔に語ってます。
映画は前時代への郷愁を誘うものかもしれませんけど、
録音に携わる一人の男の物語、
録音、音の真空パック、の技術者の後ろ姿を描いてくれてるような印象を受けます。
余談ですが、サラ・ムーンという写真家・映像作家が映画黎明期の頃の手法で
ショートフィルムを作っていたりするそうです。
自分はまだ見ていないのですが、是非見てみたいです。
録音、撮影は20世紀の産物で、歴史的には比較的新しい技術、文化と思います。
黎明期の作品には、単純に、音や絵に対する素朴な驚きや喜びが含まれているような感じがします。
目や耳が汚れてきたな、って時にはこれを見てリフレッシュしてます。