マナフォン
待ちに待ったシルヴィアンの新譜。
この”CD+DVD+ブックレット2冊”のデラックス・エディションは2000部の限定生産。しかも直筆のサイン付き。商品内容を見れば大量生産するには不向きな面もある。でも2000部とはちょっと少なすぎる。全世界に彼の信者は何人いると思ってるんだ!
彼のオフィシャル・サイトでは、8月13日より先行予約販売が始まった。このレヴィューを書いている9月14日現在、オフィシャル・サイトの購入者には、いち早く商品の発送も開始されたとの話もチラホラ・・・
オフィシャル・サイト以外の販売店の購入については色々と憶測を呼んでいる。
「果たして本当に手に入るのか?」と言う憶測。
他の販売サイトの商品説明には「限定品につき、ご予約頂いてもご購入できない場合がございます」と記載されている。」う〜ん危険極まりない・・・
この商品を後に知る方にとっては、あまりの仕打ち。数ヵ月後には超プレミア価格になる事間違いなし。
朗報!10月29日よりオフィシャル・サイトで追加注文決定。予約受付中。
Sleepwalkers
「Blemish」以降のオリジナル作品での孤高の実験精神と美しさを僕は今でも絶賛するが、一方でその静けさと緊張感故に、聴くシチュエーションが限られてしまっていたのも事実である。
本盤の場合、ここ10年程の音の成果を整理しなおしたものだが、オリジナルからより聴き易く手を加えられていたりして、他のレビュアーの方も触れられているとおり、単なる寄せ集めではなく一個の独立したアート・パッケージとして成立している。何よりも、この10年程の様々な名義での音楽的実験とデビの人生が全て「必然」として消化・蓄積され、本盤の「穏やかさ」に結晶しているという事実に僕は感動する。
なお、ジャケットはクリスタマス・クラウシュという女流写真家のセルフ・ポートレイト(!)で、一言で言い切ってしまうと若くて綺麗な時しかできないゴスな作風の人なのだが、その儚さが暗さと美しさに同居した作品は本盤の枯れた音世界にある種の若々しさとエロティックさ、一度見たら忘れられない鮮烈な印象を添えてくれている。ナイス・アシストだ。(彼女の他作品は公式ページで公開されているので、興味のある方はkristamasで検索してみてください。)
Dead Bees on a Cake
どの曲もゆったりとした気分で聴かせてくれる。彼の良さが存分に出ているアルバムだと思う。ゆっくりしたテンポの曲が多いアルバム。曲数も多いし、1曲あたりの時間が長いものも多い。個人的に特に好きなのは12曲目の「Wanderlust」。
Victim of Stars 1981-11
本当に久しぶりに見たジャケット写真=「世界一美しい男性」。そしてライナーの写真=「かつて世界一美しかった男性」。この2枚の写真を繋ぐグラデーションがまさにこの2枚組CDだと思います。でも、変わったのはデビシルだけじゃなくて、おれらも同じように歳を取ったんだよ、ということを思い知らされる怖いCDでもあります。
21世紀になってから枯れたなあと思っていましたが、なんてことはない昔から枯れてましたね、ということがわかります。要は彼の音楽的なコア部分はほとんど変わっていなくて、リスナーである自分が変わっていったということです。そんなわけで、デビシルの変化を俯瞰するつもりが、逆に自分の変化を見せ付けられる結果となりました。おそろしいことです。
それにしても無視され続ける"Blue of Noon"が不憫。また入りませんでした。インストを入れないのはコンセプト的には正しいと思います。
そしてこのアルバム、ものすごくいいサウンドになってます。ゴースツは去年録音しなおしました、といわれたら信じるかもしれない。聞き取にくかったバンブーミュージック&ハウゼスのシンセが完璧に分離してますので、マニア的に非常に美味しいです。しかしこのスッキリしたサウンドは教授の意図したものとは遠い感じもするので、評価は微妙です。
いずれにしても、ただのベストアルバムなのにいろいろ考えさせられる作品でした。この人とともに青春を歩んで、歳をとってきた人も多いと思います。未だに現役でいてくれることに感謝して、次作品を期待したいと思います。
なお、戦メリのインデックス(開始点)がズレていて、バンブーミュージックのラストにかぶっています。なので戦メリだけ聴こうと思って飛ばすと、イントロがちょっと欠けます。これは不具合だと思うので、修正して欲しいです。CDを連続して聴く時には問題ありませんが、iTunesに取り込むとギャップ判定が危ないのではないかと思います。
Died in the Wool
リミックス盤というと、大抵の場合オリジナルに遠く及ばない内容が殆どだが、この作品は別格だ。
ディスク1に前作「マナフォン」からの変奏(remix)が6曲、新作が6曲の計12曲。 ディスク2に18分ほどのアンビエント1曲が収録されている。
remixを含めて、曲の多くには弦楽四重奏(ヴァイオリン2、ビオラ1、チェロ1)によるアンサンブルがメインに配され、より現代音楽的になっています。
かつてピエール・ブーレーズに師事していたという現代作曲家、藤倉大によるストリングスアレンジによって、より緊張度が増して躍動感のあるサウンドに変貌しています。 曲によっては即興演奏か?と思う様な所もあり、弦楽アンサンブル、エレクトロニクスが混然一体となったバックにシルヴィアンのヴォーカルが相まって、もう尋常ではない完成度です。
デヴィッド・シルヴィアンはずっとこういう作品を作りたいと思っていたのではないでしょうか。 以前シルヴィアンが武満徹さんと一緒に何か作りたいと思っていると言っているのをどこかで読んだ覚えがあります。
個人的におすすめは3曲目「I SHOULD NOT DARE」7曲目「SNOW WHITE IN APPALACHIA」です。マナフォン国内盤のボーナストラックでもある4曲目もやはり良いです。
前作マナフォンは「深い森」をイメージさせましたが、今作は「幽玄の美」で禅寺の枯山水や水墨画を想起させます。
対となる2作あわせて楽しんでいます。