帰ってきた珍島犬ペック 韓国・忠犬ハチ公物語 (韓国人気童話シリーズ3)
児童書。デズモンド・モリスの犬種事典によると、珍島犬は韓国では国宝、天然記念物に指定されている。犬食文化を持つ韓国で純粋種の犬が生き残るのは奇跡だとも。本土から離れた島という地の利が、珍島犬という犬を守ったとも言える。賢く、独立心旺盛で主人と家族をよく守ると言う。この本は1993年に実際に起きたことを元にして子供向けに書かれたもの。
珍島で暮らしていた犬ペックが家庭の事情で遠く離れたところに売られたものの、7ヶ月かけて300キロの距離を走破し、もとの家族のいる珍島に戻ってきたというのが事のあらましだ。その間ペックが、どんな道をたどり、どのような生活をしながら家を目指したのかは誰にもわからない。本書はその空白部分を想像で補い、ペック自身を語り手として子供向けに書かれた。サブタイトルに「韓国・忠犬ハチ公物語」とあるが、どちらかと言えば「名犬ラッシー」に近い。無事に帰りついたペックは、ラッシー同様、もとの家族に大切に飼われている。
事典に詳しい珍島犬の特徴を物語に折りこみながら、ひたむきに主人を慕ういじらしい犬の姿を描いている。「名犬ラッシー」が一切の擬人化を避け、第三者の視点で犬を描いたことで、十分に大人の鑑賞に堪える物語になっているのに対し、本書はペックが当事者の視点で書いているので子供向き。