アンダースタンディング・ジュエリー
まず値段と写真の素晴らしさに圧倒されました。919の宝飾品は、肖像写真を除きカラー写真なので、その美しい色合いを実感できるでしょう。鉱物化学的な宝石自体の基礎知識も兼ねて、主だった宝石が、天然か合成か、或いはイミテーション、そして産地別に見分ける方法を冒頭で紹介しますが、やはり素人にはなかなか困難なようです。続いて年代ごとによるジュエリーの変遷をたっぷりと見せてくれる本編という構成です。ウィンザー公爵夫人の有名なコレクションも含まれているように、本書で紹介される大部分のジュエリーが、サザビーズのオークションに登場したものなので、確かな品質とスタイルをうかがい知ることができます。各時代、アイテム(ティアラ、イヤリング、ネックレス、ブローチ、ペンダント、リング、20世紀に入るとリストウォッチなどが加わります)ごとに整理されています。その時代のファッションや社会情勢などにあわせ、ジュエリーも使う宝石やデザインが変化しているのを一目瞭然で分かるのも本書の特長かと思います。作品によっては、裏側の写真もあわせて載っているのが大いに参考になりました。あと類書にはよくある専門用語集といったものが巻末にないので不便に感じました。
現代アートビジネス (アスキー新書 61)
ギャラリスト・小川登美夫の半生とアートとの関わりを通じて、「アートビジネス」の現場をわかりやすく著した良書。
村上隆、奈良美智を中心に、ちょっとしたドキュメンタリー感覚で読むことができます。日本の美術市場は海外で評価を得たものを逆輸入するという経緯をたどりがちですが、本書はそうしたことに対する問題提起や、逆に海外市場にアートを売る楽しさが記されています。本書を読めば、画廊に足を運びたくなること請け合いです。一方で著者は、投機的なアートビジネスに対して懐疑的あるいは警鐘を鳴らしており、ビジネスとは言いつつ実直な印象を受けます。
アートに「関心がある」程度の方、むしろそういった方が読まれるといいかも。
まじめに「アートを売るということ」を知る入門書といえるかも知れません。
現代アートを買おう! (集英社新書)
気に入ったアート作品を購入したことのある人は意外と多いのかもしれない。
でも、それをライフワークとして、40代にしてすでに300点以上をコレクションしている人は日本ではそう多くないだろう。
さらに、普通のサラリーマンに限ったら、おそらく日本ではこの著者くらいなのではないだろうか。
著者が初めてアート作品を購入した際のエピソードから、名だたる世界各国のアーティストによる夢のマイホームを建てるに至るまでの実体験から生まれたアドバイスは実に参考になる。
なにより、著者のアートへの並々ならぬ敬愛と真摯な姿勢には脱帽させられた。
アートを買うのに必要なのは莫大なお金ではなく、愛情なのだということがわかる。
アートコレクションなんて自分には縁遠い・・・と思う人にこそオススメしたい。
サザビーズ 「豊かさ」を「幸せ」に変えるアートな仕事術
サザビーズという題名だが、サザビーズ社の創業物語ではない。
日本支社の石坂氏の自叙伝である。ただし美術品ビジネスは
未知の世界で面白かった。著者の驚きや決断の記述に、何やら
お坊ちゃん的な匂いがあり違和感を覚えたが、それもそのはず
名門のご子息であった。富裕層向けビジネスは富裕層の感性を
もたずにはできないだろう。オークション場面もスリリング。