カシオペアの丘で(上)
私はガンの進行に伴う患者の容態・感情の変化に興味が引かれ本書を手にとった。
語り手が一章ごとに変わっていくため飽きずに読むことができ、また登場人物らの感情の変化が大変細かく描写されていて非常に興味深かった。
が、それ以上でも以下でもなかった。
上巻で予め結末の伏線が張ってあるのがその一因であろう。読者はその過程を辿るように下巻を読まざるを得ない。また過去にとらわれている登場人物たちが次第に未来に目を向けるという設定は良い。しかし著者はテーマ「自他を許せるか」を半ば強引に登場人物全員のそれにしてしまったため、無理矢理感は否めなかった。
そのような理由で☆3つ。
るんびにの子供 (幽BOOKS)
表題作は、地味で盛り上がりに欠ける作品だが、それだけに作者の力量がわかる。
この作品に賞を与えた審査員の目の高さが、他の作品を読めば理解できるはず。
どれもこれも素晴らしいが、特に最後の作品は秀逸である。
ホラーとしてだけではなく、青春恋愛ものとしてもかなりの完成度だと思った。
ぜひ作者の長編も読んでみたい。