歌うクジラ 上
面白いか否かで言えば、かなり面白い。冒頭のバイオレンスシーンも導入部としてはとても巧く引き込まれるし作品全体のテンポもよくかなり読ませる。だが、なんというかテーマがそのまま書かれ過ぎ、なのだ。純文学として成立させる事の原則としてテーマはあくまでも具体的なモチーフに表現しなければどうにもならない。『カラマーゾフの兄弟』のような例外中の例外はさておき、この最新作では残念ながら村上龍氏の創造性もだいぶ厳しいところに来ていると思わざるを得ない。無論、中には著者の才能がぎらりと光る秀逸なモノを食べる女性の映像シーンがあり、「これこれ!村上龍の才能の凄いとこ!」という所もあるのだが、全体としては平坦。かつ著者の最大の武器であったねっとりとした描写力が無くなり非常に淡泊な文体になってしまっている。村上龍氏は村上春樹氏と違い、純文学の王道でノーベル文学賞候補的な位置づけで評価を受ける事に興味も無いと思う。でなければあんなにポンポン思い付きで小説書きまくらず、メインストリームを構築する事に主眼を置いて活動してきたはずだ。TV出演も多いのだから経済的には相当潤っているだろうし、小説で儲けまくらなくても良かったはずの人だ。僕はそういう雑食動物的村上龍が好きだし今後も応援していきたい。そこで、また『半島を出でよ』の時のようにみっちり時間をかけて、あとひと花もふた花も咲かせて欲しい。頑張れ村上龍!
シンフォニック・スター・トレック
40年生まれの自分にとってリアルタイムで「スター・トレック」TV版を見ていた世代ではないですが、1曲目のレナード・ニモイのナレーションを聞いただけで大感動!!!この1曲だけで充分です。