ワイルドカード
2001年、Terence Trent D'Arbyが、Sananda Maitreyaと改名しての作品です。
通算で、5thアルバムとなります。
長期にわたる沈黙、レコード会社から離れ自主レーベルの立ち上げ、Sananda Maitreyaへ改名。。。
これらを経て、「フラット状態(ゼロ地点)に戻っての作品」というニュアンスが強く感じられる作品です。
今回は、
リラックスした雰囲気、ミドルテンポ、スローテンポで、じっくり聴かせるタイプの楽曲がほとんどで、 ある種、「1stの延長線上」と言える作品だと思います。
「2000年代に入ってからの1st」「Sanandaとしての1st」でもありますし。
(3rd, 4thにあった、ダンサブル、刺激的、アヴァンギャルド etcの要素は、大幅に減少してます。)
R&Bテイストな楽曲、Funk Rockテイストな楽曲(3rd, 4thよりも軽い感じ)が軸になり、
曲によって、民俗音楽、ゴスペル(宗教歌)、エレクトロニカ etcの要素がまぶしてあります。
スタイリッシュなR&B(2)、Happy感あふれるFunk Rock(3)、Glen Ballardとの共作(4)、
打ち込みリズムにメランコリックな歌が乗る(6)、知的でミステリアスなR&B(7)、トリップ感のあるサウンド & ソウルフルな歌唱の(9)、
Heavy Funk Rock meets エレクトロニカな(15)、中東風サウンドとアコーディオンが絡む幻想的な(17)
。。。などなど、聴きどころ多いです。
私は、特に(4)(6)(17)に、さすが、Sananda(TTD)と言いたくなる「天才的閃き」「新鮮な感触」を感じました。
ただ、各楽曲はTTDクオリティですが、「このアルバムはコレ!」と言えるような楽曲が無いと思います。
また、アルバムの流れについても、これまでと比べて「起伏に乏しい」「曲集」といういんしょうがあります。
(「☆-1」させていただきました。)
「TTDファン」なら、楽しめる内容だと思います。
(参考)
日本盤は、ボーナストラック「Testify」収録。(全19曲)
「Joker’s Edition」というのもあります。
バイブレイター
このアルバムが出た当時は、カッコイイけど?渋すぎて??
わからない!!!非常にとっつきにくい印象でしたが、
最近聞き返して、めちゃくちゃヘビーローテーションです。
真っ黒いファンクの塊にがつんとやられる。
声がマジに鬼気迫る。
ジャジーなM5、M6は複雑な美しさ。
以前から言われていましたがリリックは本当に繊細。
再評価してほしい人です!!
Introducing the Hardline...
87年リリースのデビューアルバムにして、彼の最高傑作。自分と誕生日が一緒ということもあり、割とリアルタイムでの思い入れも強く熱心に聴き込んだアルバムだったのだが、2nd以降の方向性には正直違和感があって長い事聴いてなかったのだが久しぶりに聴いてみたらすごく良かった。
2nd以降と何が違うのかというと、要はセルフプロデュースか否か、という点である。このアルバムを聴けばよく分かるが、すごいボーカリストだし、ソングライターである。でもプロデュース面に関しては…という。だから彼が常にプリンスを意識してああいう風になりたいと思ってたのはよく知られているが、結局プリンスにはなれなかった。「お客さんの満足度」を軽視しないプリンスは実は稀代の「エンターテイナー」だとも言えるし、TTDはポピュラリティよりも自分が納得出来るかどうかに重きを置いている分職人気質のアーティストだとも言える。
で、この1stだがUKトップ10入りした"If You Let Me Stay"や全米1位になった"Wishing Well"を聴けば分かる通り、基本「昔のソウルを現代風に洗練されたアレンジで」というアプローチになっている。で、この作品のプロデュースを担当しているのが初期Human LeagueのメンバーだったMartin Wareおよびその相棒のGlenn CregoryことHeaven 17のメンバーである。彼らは別名プロジェクトのB.E.Fでティナ・ターナー復活のきっかけを作ったりしているのだが(彼らのプロデュースした"Let's Stay Together"がヒット)、元々は筋金入りのボウイチルドレンで。案の定ティナにボウイの"1984"(『ダイアモンドの犬』収録のボウイ流ブルーアイドソウルの代名詞的な曲)を歌わせたり、元アソシエイツの故Billy MackenzieにもB.E.Fのアルバムで"Secret Life Of Arabia"を歌わせたりしている。手法としてはエレポップ、だがソウル・クラシック的な感触を持たせるために打ち込みではなくバンド的なノリを重視したアレンジ、お手本になるのは"シン・ホワイト・デューク"期のD・ボウイ…と。
だから、このアルバムは確かにアメリカ出身の黒人アーティストの作品ではあるのだけど、そのサウンドがむしろUKのブルーアイドソウル(同時期のスタイルカウンシルやブロウモンキーズ、ジョージ・マイケル等)に似た湿り気とノスタルジアを感じさせるのはその辺に理由がある。このやり方はすごくうまいやり方で、トレバー・ホーンがSealをプロデュースして大成功させたり、といった形で継承されたりしている。この人がもし自分の器を冷静に客観的に見極めて、プロデュースを腕のいい白人に任せる謙虚さを持ち合わせていたら、2nd以降もこのクオリティを維持出来たかも…いや、「一期一会だからこそ獲得できた特別な輝き」という形容の方がこの名盤にはふさわしい。
テレンス・トレント・ダービー・イン・コンサート [DVD]
全米制覇前、1987年のデビュー後まもなくの、ドイツのテレビでのスタジオライブ。
きっと、ライブハウスでの収録なんでしょうステージ中、お客さんのビールを「テレンス」が
貰って飲んだりしてる。そんな感じの和やかな雰囲気さえ感じるライブ。
廃盤になった、同時期のライブビデオ「TTDライブ(VHS)」比べると、いまいち演奏自体の
迫力も弱く、映像的にも刺激が薄い仕上がりになっている。
TTDのパフォーマンスは圧巻ですが、純粋にクラブでの「ライブ」なのでスタジオセット
や、カメラワークとかも演出が薄く、見方によっては「青っぽい」印象も受けてしまう事からも、
本作をファン以外の人にお勧め出来るかどうかは微妙なトコロ。
「TTDライブ(VHS)」の映像を見た人には、ちょっと食傷気味である事は確かですが、現在
市場に出回っている「DVD」はこれだけなのでファンにとっては有難い作品。