夜の大捜査線 [DVD]
この映画は、’70年代に日曜洋画劇場で初放映されレイ・チャールズの主題歌ともども心の底から大感動して以来、何度もテレビ放映されてきた名画中の名画ですが、この会社にしては珍しく、吹替えが収録されていません。せりふの内容で見合わせているのでしょうか?それとも他に原因があるのでしょうか、音声のテープが残っていないとか。この映画は、日本語吹替えがあるとさらに感動が伝わってくると思います。特に最初の放映時の田中信夫(ポワチエ)、富田耕生(スタイガー)、内海賢二(オーツ)版は絶品でしたので、ブルーレイ発売時には是非ともお願いします。
夜の大捜査線 [DVD]
アメリカの病魔「人種差別」を糾弾すると同時に
「刑事コンビ映画」ならではの魅力も与えてくれる
素晴らしい作品であります。
まさに「社会性と娯楽性」をバランスよく配合した作品であると言えるでしょう。
夜の大捜査線 [DVD]
レイ・チャールズが歌うこの映画の原題でもある「In The Heat Of The Night」をバックに、画面の奥の一点の光が徐々に大きくなり列車の灯りとなり通り過ぎていく渋いオープニングからグイグイ引き込まれる。このオープニングはこれから始まる殺人事件をめぐる「熱い夜」を暗示しているようだ。
この映画に殺人事件の謎解きを期待していると少々ガッカリする。そんなものはこの映画のテーマではないからだ。人間の持つ偏見がいかに危険なもので、冤罪を生んだり人間関係を崩していくものであることを中心に描いたドラマだからである。偏見で自分のやり方を崩さないロッド・スタイガー演じる保安官はその存在自体が観る者に不快感を与えるほどリアルだ(彼はこの役でアカデミーを取っている)。彼の存在は「許されざる者」のジーン・ハックマンに類似しており、何らかの影響を与えているのかもしれない。そして、この偏見だらけの保安官が主人公のシドニー・ポワチエとぶつかり合いながら次第に友情が生まれてくる点もドラマの面白いところ。
クインシー・ジョーンズの音楽や街の風景や綿花畑の映像は南部の雰囲気を十分表現しており、ドラマにリアルさを加える効果をあげている。最近にはない硬派の人間ドラマの傑作といえるだろう。
ところで、この「夜の大捜査線」という邦題は「In The Heat Of The Night」を訳したものなのだろうが、大捜査線というと何か大きな黒幕がいる事件を解決する映画と思いがちで(現に私は子供の頃この映画をそのような映画と思い込み初見のときはいささかガッカリした)、原題の雰囲気を出していないと思う。邦題の決め方に問題があるのではないかと思っているのは私だけだろうか。