華麗なる週末 [DVD]
マックィーンにしてはのんびりした作品。ミシシッピの金持ち農場主の孫をテネシー州メンフィスへ連れ出して羽を伸ばす,ちょっとしたロードムービーでもある。
少年の成長物語にしては刺激が弱いし,人生の先輩が背中で教えるというには先輩の生き様がだらしない。
ただ背景として知っておくべきは,ミシシッピが全米屈指の黒人差別意識の強い州であったこと。原作のフォークナーでさえ差別発言をした記録もあるらしい。映画の中では淡々と差別的台詞が語られる。
南部の美しい風景が素晴らしい。マックィーンと黄色い車,確か「華麗なる賭け」でもそんな組み合わせがあった。少年ルーシャスを主役と心得て観ると,何と気楽に観られることか。
美しいピクチャーディスク。特典は特にない。
ジョン・ウィリアムズ・グレイテスト・ヒッツ1969-1999
天才・ジョン・ウィリアムズのまさにベスト。知っている曲は多いのだが、そのほか初めて曲だけを聴く曲などもすべてにわたってすばらしいと思いました。プライベート・ライアンのテーマも曲だけで聴いても本当に迫力がありました。映画ファンだけでなくとも音楽ファンにはすばらしてアルバムだと思います。
「太陽にほえろ!」ポリドール・マスター・コンプリート’72~’86
TV版との違いがある曲もありますが、番組内で頻繁に使用された耳馴染みのものはほとんど入っていると思います。さすがにコンプリートというだけの事はあります。
曲のタイトルではピンときませんが、現場に向かう時のあの曲…聞き込みしている時の曲…カーチェイスの曲…などなど大体聴いたことがある曲です。
曲の年代順に収録されているので、「この曲ってこんな前から使ってたっけ?」とか、逆に「もっと前から使ってると思ってた」なんて発見もあって楽しかったです。(←大分マニアックな聴き方かもしれませんが…)
華麗なる週末 [DVD]
ミシシッピの片田舎からメンフィスへと舞台を移しながら、美しい風景の中でくり拡げられる4日間のエピソードを描いたエンタテイメント・ロード・ムービーである。
スラップスティックな前半に続き、中盤では少年を取り巻く人々との人間模様、そして後半のクライマックス、草競馬レースの緊迫感、終盤はフォークナーの硬骨なメッセージ、起承転結が明瞭で切れ味のいい展開だ。
スティーヴ・マックイーンがクレジットされると派手なアクション系のヒーロー映画を連想しがちだが、この映画で彼が演じるのはお調子者の下男、他作とはひと味違う軽妙なキャラクターでルーシァス少年の脇を固める。
まさに「ハキダメに鶴」、美しくて心やさしく、そして気骨のある娼館の女 (シャロン・ファレル)、物語のキーマンは出自にいわくのある黒人(ルパート・クロス)、それぞれ個性溢れる持ち味で好演している。
加えて1905年製黄色のウィントン・フライヤー、セリフこそ無いもののこの映画の重要な登場人物として古き良きアメリカの街角をエレガントに疾走?、マックイーンが運転しているのもご愛嬌だ。
ジョン・ウィリアムズのテーマ音楽は雄大にして爽快、音楽担当にはラロ・シフリンの名前もあり、カントリーなバンジョーのブレイクダウンやディキシーランド・ジャズなどを聞かせてくれる。
二人のナンバーが場面ごとの雰囲気を実に巧く盛り上げている。
下男に唆かされたとは言え、周囲の人々に嘘をついてまで出奔した少年。彼をベルトで打とうとする父親に祖父は言う。
「罰を与えられたことにより罪が消えた、許されたと思わせてはいけない。」
続いていて少年に、「嘘に傷つくのは結局は自分、自分の力でそれ(自己嫌悪)を乗り越えなければいけない。」と語りかける。
いかに上手く嘘をつくか、時にそれを称賛さえする私たち、小手先の世渡りを、知らず知らずのうちに子供たちに見せてはいないだろうか。
マックイーンも愛読していた文豪フォークナー原作だが、決して格調高い「文芸映画」仕立てでなく、人種偏見など当時の社会的背景も描き込みながら、娯楽映画として見所一杯の仕上りだ。
フォークナーの小説は視覚的に優れ、映画化された作品も多い。
「八月の光」など誰か映画化してくれないだろうか。