殺意は幽霊館から―天才・龍之介がゆく! (祥伝社文庫)
「天才・龍之介がゆく!」シリーズの第3弾。
138頁という薄さで、中篇というべき一冊だろう。値段も安い。
トリックに切れがある。「おお!」とびっくりさせられる。しかも腑に落ちる。とはいえ、小粒な印象はぬぐえない。
悪くない作品だが、過剰な期待は慎むべし。
4000年のアリバイ回廊 (光文社文庫)
1999年に出た単行本の文庫化。
デビュー作『3000年の密室』につづき、縄文時代と考古学をからめたミステリとなっている。
凄く魅力的な事件だ。スケールが大きく、とうてい解決しえないような不可能事が提示されるのでワクワクする。
火山の噴火によってポンペイのようになった、縄文期の謎の村という舞台設定も興味深い。
しかし、解決に至ってガックリする。肩透かしもいいところである。
また、考古学的な知識や学説を取り入れるという面でも、前作より格段に落ちるように感じた。現実の考古学から離れ、あまりに「夢」を描きすぎたためだろう。
黄昏たゆたい美術館―絵画修復士 御倉瞬介の推理 (実業之日本社文庫)
柄刀さんの本格ミステリは、私なんかには難しすぎるというのが
他の作品を何作かを読んでみての感想でした。
雑とか手抜きとかは感じたことなかったけど。
そんな柄刀さんの絵画をモチィーフにしての短編集。絵画って割に軽く好きなので、買ってみたら。
いや、面白かった。絵画の蘊蓄と謎に現代のミステリが絡むというお約束の構成ですが、一話一話どの作品も「ああ」「ああ、そうだったのかあ」と
ずんずん来ました。
いいもの読んだーって感想です。
これからもこのシリーズ読みたい。
満足。
密室キングダム (光文社文庫)
他の方のレビューでも触れられているが、この作家は小説家としては、あまり文章がうまくない。
タイトルからしてそうなのだが、擬音語・擬態語・外来語などカタカナの使い方がかなり無雑作であり、かつ比喩表現も変だ。
凝った文章を書こうとして失敗しているようにも見える。
長大な作品のわりには、軽く読めると言えば、そうなのだが、逆に言えば重みが無い。
笠井潔の『哲学者の密室』のような、いかにも力作という手ごたえが無い。
また、三津田信三の『厭魅の如き憑くもの』のような、文章の読みにくさが世界観と結びついていることへの驚きも、感じられない。
そのため、密室状況が次々と現れ、それが解き明かされていくまでは、それなりに面白いのだが、そこからが最大のクライマックス!とまでは行かない。
冷酷な真犯人との対決から終盤にかけての展開を、十分に支えるだけの文章力が無いように思える。
とは言え、個々のトリックと、隙の無い解明には感心させられた。
ミステリ好きなら、文章の難点に目をつぶっても読むべきだが、一般にはお勧めしない。
じっさい、私は途中で一度、文章の雑さが厭になって読むのを中止し、改めて最初から「そういう本だから」と割り切って接して、初めて読みきることが出来た。
密室キングダム
本格ミステリ好きの方にお勧めです!難問の密室殺人事件が何度も起きますが、その密室の謎を解くと、さらに心理的な罠が待っているのです。それを一つ一つちゃんと論理的に解いていくという、まさに本格!というべきものです。
かなり分厚い本ですが、読んでいる間ずっと楽しいです。
今年はきっとこれがNo.1になるでしょう。ここ10年のなかでも1位かも。