迷い婚と悟り婚 (PHP新書)
帯の著者の写真を見て「ふけたな」と思いましたが、未だに格好の良さは感じられます。
で、本文。最初に結婚を勧める理由が7つあって解説していましたが、目新しさはなく、「それだけかよ」と思いながら読み進みました。が、様々なアドバイスを重ねていくと、とてつもない非常識人間が結婚することになります。
で、やがて気がついたのは、本書は著者の行動や生活を肯定するエッセイであるということです。真面目な啓蒙書ではないと思って読み始めると、本来の皮肉屋の視点がとても面白く感じられるようになりました。ラストの女芸人との噛み合ない対談などは、そうとうきついブラックジョークのように思えてきます。
あとがきに記載された著者の門限とその顛末を読んで、上記の思いをさらに強く感じました。
英雄はそこにいる
エンターテインメントとして非常に優れているということは間違いありません。誰もが憧れるような英雄、その英雄と恋仲に落ちる美女たち、愚直な警察、世界を牛耳る暗黒組織、そして霊能力のある少年がいる。これだけ魅力的な登場人物たちが交錯するのですから、面白くないわけがありません。映像化したら陳腐な2時間ドラマになりがちなものも、文章で読めば読者の想像力次第で大きく膨らんでいきます。シャーマン探偵が登場するだけに荒唐無稽な感もあり、最初は違和感を覚えました。しかし、ファンタジーものだと割り切ってしまえば問題ありません。これも立派な島田ワールドです。寝食忘れて没頭することをお約束します。
君が壊れてしまう前に (ピュアフル文庫)
初めて読んだ島田雅彦。
14歳の主人公がつづる日記形式で物語りは進んでいく。
非常に良い作品だった。
島田雅彦、もっと読んでみよう。
14歳の男子はみんなこの小説みたいなことを考えて、悩んで、遊んで、恋をして、勉強して、そしてまた、やっぱり悩む。
「学校も社会も、僕たちが自殺したくなるように作られているのだ。だから、あしたぶっ壊すしかない。でも、なかなかあしたが来ない。」
「戦後、日本はアメリカの研究をして、経済成長をした。戦争を放棄して得をしたんだ。戦争はよその国にやらせておくのが一番だ。
ぼくたちは戦争をする代わりに恋愛をしていればいいってことかな。」
こんなエネルギーに満ち満ちた、あの頃の僕ら。
今の僕らは?
あの時に持っていなかったものを得た代わりに、あの頃の大切な何か、何か大きなエネルギーを失っていないか?
「君が壊れてしまう前に」、この本を手に取ろう。まだ、遅くない。
るにん [DVD]
力作。 何といっても松坂慶子の演技である。 聖と邪、情と怨が相半ばする濃密なキャラクターを見事に演じ、見ているこっちが引いてしまう程鬼気迫るものがある。女優魂が爆発している。 面白いのは、前半がハイテンションで、後半にいくに従って落ち着いている。監督・奥田瑛二の意図的な演出なのだろうか。 ともあれ、ラストシーンの斬首寸前の全てを超越したような艶めいた表情にとどめを刺された。まさしく渾身の演技。 長くなるのを承知で、千代と花鳥のドラマを間に挟み込む事で、この映画のテーマたる人間の業(カルマ)の深さと儚さ、哀れさが更に作品に重みを加えている。 西島千博もあの「池袋〜」とは違う野生味溢れる存在感。最後のクライマックスといえる捕物劇の息を呑む程の壮絶さ。あの立ち回りの、えもいわれぬしなやかさはさすがバレエダンサーたる彼の真骨頂だ。 映画力ともいえる熱量を持つ奥田演出だが、反面それに伴うドギツさ(特に本人自ら出演する場面の意味不明なエグさ)には好き嫌いが分かれそうだ。
東京の嘘 [DVD]
撮影・カット割は下手、カラコレ(色調調整)も下手、
あと台詞が役者の口に馴染んでない(つまり監督が役者に演技をつけれてない)。
ほんとに素人がつくったんじゃないの?と思うぐらい技術的にはダメダメですが、
監督・井上さんのセンスがいいのか(ただし演出能力は無い)、不思議な魅力のある、すごく心に残る作品でした。
あと岩田さゆりもすごく魅力的でした。