文章にある写真を見る為にﾍﾟｰｼﾞを行きつ戻りつせねばならないので
その辺が校生上、改善の余地があるかと。誤解のないようできるだけ真摯に
説明しようとされているのだが、どうしても難解と思う向きも出るだろう。

但し、内容的には☆5つ以上の力作。感覚的なものを伝えるためのある種の方便
としての様々な伝統的言い回しが、そのｲﾒｰｼﾞだけが独り歩きして誤った練習を
繰り返す結果を生んでいることに鑑み、それらの持つ本当の意味を運動理論
として整理した上で詳述し、原型としてどういう身体の動かし方が理想なのかを
説いている。この内容を読んで子供達のﾊﾞｯﾃｨﾝｸﾞﾌｫｰﾑを見ていると、生半可な言説で
弄りまわしてはいけないな、と深く反省する。一見しておかしく見えても
そのﾌｫｰﾑは子供一人一人が何とか結果を出したい、前にこれで上手く打てた、という
努力と経験知の帰結であって、部分的に見える貌だけを改善させようとしても
本質的な解決にはならないのだと知った。そう、「指導」には理論的なﾊﾞｯｸﾎﾞｰﾝ(裏付け)
が絶対あるべき＝必要なのだ。

これまで読んだ様々な指導書で部分的にﾌｫｰｶｽされてきた理論を包括しつつ
身体の自然な動き方に根ざしたﾚｸﾁｬｰは野球少年少女にﾊﾞｯﾃｨﾝｸﾞの仕方を示す上で
格好の教科書になるだろう(子供達自身が読むのには無理があるが)。
正確に且つ詳しくは手にとって頂くしかないのだが、これは押さえておくべき1冊
だと思う。上半身(肩甲骨、胸郭)の動かし方や身体がどういう順番で始動していく
べきか、肘や手首の持って行き方 等々、言い古された指導言語の誤謬を正しつつ
的確にﾎﾟｲﾝﾄを解説していて目から鱗が落ちる思いがする。
内角高めを捉えるﾌｫｰﾑの確立が他のｺｰｽ、球種への対応も可能にするとの指導が
ど真ん中を打つﾌｫｰﾑを原型とする指導が多い中では異色と言えるかも知れない。

今の子供達はﾊﾞｯﾃｨﾝｸﾞｾﾝﾀｰも有り、ﾌﾟﾚｲをｽﾏﾎ等のﾑｰﾋﾞｰで撮って自分のｽｳｨﾝｸﾞを
手軽に検証することもできる訳で、その気になれば上達法は多種多様にある。
あとは何が良くて何は駄目なのかの見極め＝ｽﾀﾝﾀﾞｰﾄﾞな理論＝原型の確立があれば
第二第三の大谷や藤浪を育てることも才能頼みではなく不可能ではない気がする。