最近リバイバル的に少し脚光を浴びているプラグマティズムの特集。「現代思想」は70年代がピークで、難しい思想を「基本や骨子が分かるような解説的論文」と「最新」と思しき「情報」を入れ込んだ意欲的な論文、それと、聞いてみたい人たちに出てもらって鼎談、対談をしてもらい、読むと、臨場感とともに、テーマの思想の琴線に触れた気がする、などなかなか知的好奇心をそそる構成が魅力だった。さらにいえば、テーマ以外の領域まで、関心を喚起するような機能もあった。でも、毎月長年そんな企画を続けることは無理なわけで、私のような勝手な読者が、わがままを言いだして、80年代以降になるとおもしろくなくなっていった。「現代思想家」も芸人ではないから、そうそう感心するようなことばかり言ってられないし。。。今回は、気になるプラグマティズムを「古典的な」それと「新」の付く部分を両方展開してくれた好論文が多い。冒頭の野家、伊藤、石田三氏の論文は、イントロとしてもいいし、俯瞰するにもいいし、それでていて新しい情報も多い。ジェイムズの思想をしっかり語ってくれた好論文もあって、ジェイムズの分かったようでぼんやりしてしまう思想の、ユニークな部分を教えられた。ハーバーマスや、ブロッホ、その他の思想家に絡めて展開する情報満載の論文も多い。分析哲学に傾斜してしまう詰まらない論文はなく、だけど、そういう時代状況をどの論文も織り込んでいるように思えた。対談や鼎談かないのは残念だったし、もうすこし、プラグマティズムの大思想家の「大著」に正面からぶつかって説いてくれるような論文があるとなお良かったが、それはなかった。70年代のピーク時とはそこは違ったが、昨今のコスト意識からいくと、かつてのような大盤振る舞いはできないのかも。今後も、今回のような感じで企画してくれると嬉しい。それが簡単じゃないなら、毎月出なくても良いような気がする。季刊でも良いしね。あと個人的に嫌いな企画は、「戦争」とか「言語」とか、なにかテーマ自体を抽象的で普遍的なものにする企画。大体面白い論文はない。最近勢いの衰えた理想社の「理想」は、まだ、毎号哲学者の名前の特集や、哲学用語の特集をやって頑張っている。おんなじようなのが良いと思う。