これ、邦題が変なんだよ〜。何でこんな邦題にしたのかしら。原題のままでいいのに。。。転生とか言われたら、とっつきにくい人もいるかもしれないけど、内容は全然そんなんじゃないよ。まあ、確かにオム・セティは古代エジプトで生きていた前世の記憶を思い出してしまったけどね。前世の記憶とかスピリットとかそーいうことが苦手な人でも普通に読めるのではないかな。そこの部分をこうだから!と押し付けるようなことは全然ないし。もちろん興味がある人には一層楽しめると思いますけどね!スイートなラブストーリーだと思います。
古代エジプトの不思議な情報がちょろちょろと見えて、それが私は面白かった。オム・セティとセティ1世の会話をもっといっぱいのせてほしかった。彼女にセティ1世に古代エジプトのことをもっと聞いて欲しかった。スフィンクスのことをちらっと書いていたけど、結局はっきりしなかったし。。。
生き生きとした古代の描写おすすめ度
★★★★☆
考古調査で分かることは限られている。現在まで残った遺構が伝える古代の姿は、かつてあったその世界の僅か一部にしか過ぎない。
ケンブリッジのバリー・ケンプという考古学者は、自分たちが行っていることは科学的なフィクションであると語っているが、たぶんほとんどの考古学者は超えることのできない時間の壁を痛感しながら、その前で模索し、想像を働かせている。
しかし、オンモ・セテイはまさに古代エジプト人が信じていたようにその壁を超えてかつての世界をいまに伝えた。
彼女の話が真実かどうかは分からない。しかし、特筆すべきことは、彼女のエキセントリックな行為にもかかわらず、当時のエジプト学の第一人者達がよき友人として彼女に敬意を示し、ともに古代について語っている点である。
エジプト学には超古代文明といったニューエージ的な解釈に対する嫌悪感が存在するが、その一方でなぜウォーリス・バッジ、セリム・ハッサン、ケント・ウィークスなど、現在エジプト学にかかわる人であれば、誰もが知っているような学者達が、オンモ・セティを認めていたのだろう。
たぶんこの本の中に書いてある彼女の語る話しから、彼らが呻吟しながら探索している向こうの世界を感じたからだろう。
ここでは「古代」は夢やロマンに包まれた神秘的な言葉ではなく、現代に続く過去の一部として扱われている。現代のエジプトの田舎に残る習慣を躊躇なく古代から続くものだとし、無機質なレリーフとヒエログリフに生き生きとした描写を与える。それはかつてそこに生きた人だけが可能にする技かもしれない。
「転生」はオカルトやニューエージに興味がある人にとっては珍しくない内容かもしれない。しかし、学術的な考古学やエジプト学に興味を持つ人にとっては、空気の淀んだ書庫で、爽やかな微風を感じるような感覚を運ぶ本である。
古代エジプトがますます不思議に・・おすすめ度
★★★★★
イギリス人の少女ドロシーは小さな頃からエジプトに引き寄せられてゆく。学校よりも大英博物館が好きで、ロンドン爆撃の中何よりも心配だったのは大英博物館・・・と書くと考古学者誕生物語のようですが、全然ちがうのです。後にヒエログリフを読み、確かな知識を身につけ、セリム・ハサンやアハメド・ファクリーなどエジプトの伝説的考古学者のアシスタントをしていた女性は古代エジプト19王朝のファラオ、セティ1世の愛人の生まれ変わりだった、という・・・と書くとただのオカルトもの?と思われてしまいますが、それも全然違うのです。
1989年に英語版が出版され各国語でベストセラーになっていた本が、やっと日本語で読めるようになりました。正直言えば、英語の本が出たときに少し読んでみました(途中でギブアップ)なにせ英語版表紙がきわめてブキミなので、トンデモ本と思いしまいこんでいました。日本語版読後、そんなふうに勝手に切り捨てていたことをオンム・セティに謝りたいと思いました。セティ1世への献身的な愛に生きたオンム・セティの物語ですが、豊かな古代エジプトの知識を懐に、まさに古代エジプトの世界に暮らした最後の女性のものがたりとも言えるのでしょう。エジプトの歴史をこよなく愛する方々におすすめします。
私の体験で恐縮ですが、30年近く前のある夏、アビュドスの神殿壁画のあまりの美しさに見とれて、思わず触りそうになったところ、ガラベーヤの爺さんがチッチッと舌打ちをしてから言った「これがもしオンム・セティだったらお前は怒鳴られていたぞ」 あ、スミマセンと撤退したことを覚えています(そのときにはオンム・セティは生きていた!)虚実とりまぜて当時のエジプト・ガイド仲間の口の端にのる伝説の人でした。
生きるために必要なもの
おすすめ度 ★★★★★
「本当の自分」は「生きるために世間と折り合っている自分」とはちょっと別モノだ――という気持ちを抱いている人は、べつだん珍しくはないだろう。でも、自分にとって「本当の自分」だと感じられるのが「古代エジプトの巫女」だとしたら、世間と折り合うのはとても難しいことになるのが普通だ。頭がおかしいと思われてしまうだろうし、そう思われたことで実際に心を病んでしまうだろう。
オンム・セティという人が、自分は現代に転生した古代エジプトの巫女であると確固として信じたまま、健康な心と明晰な知性を保って生き抜くことができたのは、なぜだろう。彼女と出会った人たちにとって、オンム・セティがエジプトの巫女であることが、彼女の思いこみであろうと真実であろうとかまわない、と感じられるようであったのは、なぜだろう?
答えは、この本の中にある。エジプトの巫女ほど極端な存在でなくとも、ちょっと違う「本当の自分」を心に抱えこまずにはいられない現代人にとって、生きるために必要な知恵が、この本の中に隠されている。