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異人たちとの夏 (新潮文庫)

山田 太一
おすすめ度:★★★★★
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失って、得て、そしてまた
おすすめ度 ★★★★☆

誰かからの愛情に飢えた時、とつぜん惜しみなく降り注がれる愛情に出会ったら、人はどうするだろうか。

本作の主人公は離婚直後、静か過ぎるマンションに一人生活。
しかも仕事のパートナーが自分の奥さんにほれていたため、彼も失った。

孤独な主人公が出会ったのは、死んだはずの父母、そして同じマンションに住む若い恋人。
自分が失った「愛」が、親子愛として、そして恋愛として目の前に現れる。

おもしろいのは、こんな突然すぎる「愛の登場」に対して、主人公が疑問より先に彼らにすがるところ。
人は孤独に打ちのめされている時、理屈よりもまず温もりを必要とするのだろうか。

彼は異人たちとの出会いで、現実で乾いた心を少しだけ取り戻す。
失って、得て、また失って、前を向く。
静かで、夏なのにしんしんとする作品。



過ぎ去ったものの力
おすすめ度 ★★★★★

本人以外にはどうでもいいような,過ぎ去った人の,過ぎ去った一言,仕草,声の調子.そうした幻のようなもののもつ本質的な力が,現実でもなく夢でもない浅草で,漠然として実は危機的な中年の主人公を再生させる.いつのまにか現実でヤスリ掛けされた人が,何によって生きかえるのか,を追体験できます.

この小説には,解説本があります.小説そのものに劣らぬ河合隼雄『中年クライシス』です.どちらも感動的な本で,私にとっては二冊で纏めて一冊です.



切なくて、怖くて・・・
おすすめ度 ★★★☆☆

父は39歳、母は35歳でこの世を去った。36年前の突然の別れ。
今目の前にいる2人に近づくことがどんなに危険なことか、分かって
いても自分を止められない。そこにいるのは紛れもなく、自分を愛して
くれた人たちだから。会うことをやめなければと思いながら、会わずには
いられない男の心が痛いほどよく分かる。きっと、ずっと抱えてきた心の
すき間を埋めたかったのだ。もう一度、親の愛情を体全体で受け止めた
かったのだ。いつかは別れなければならないのに。そのことがとても
切ない。男と恋人ケイとの関係も、ホロリとさせられるものがあった。
最後はちょっと怖かったが・・・。



とにかく読んでみて
おすすめ度 ★★★★★

とにかく理屈ぬきで面白いよ。異人とはこの世に存在しない人、死んだ人のことなんだけど、この小説は何がテーマなのかよくわからないけど、そんなのどーでもよくて、とにかく面白い。何が面白いかってそれがわからないのが面白い。評価になってないか(汗)主人公の中年男がある日、江原さんみたいに見えないもの(死んだ人)が見えてしまうのです……でも、只の怖い話じゃないのです。山田先生は視点が違う。すごい才能。今まで読んだことのない小説で、恋愛?、ミステリー?、ホラー?ジャンルは……うーん、読む人それぞれ



切ないけど・・怖い
おすすめ度 ★★★★☆

ホラー小説というジャンルになるのかな・・。前に浅田次郎さんの『活動写真の女』という本を読んだのですが、その感じに少し似ているなという印象がありました。(話は全く違うし、この本の方が読み易く分かり易くて私は好きです)
ここに出てくる異人達というのは想像がつくかと思いますが、亡くなった人々です。
孤独を求めて妻子と別れた主人公は、ある日自分が本当に孤独で誰からの関心も得られない事を寂しく思います。そんな時に自分が生まれた浅草で死んだ両親に逢い、二人と過ごすことでとても幸福を感じる事が出来る。家族って、親って本当にありがたくて大切な物なんだと感じる事が出来ました。
最後にちょっとしたどんでん返しがあるのですが・・・自分のとった何気ない行動が、とんでもない事を引き起こす事もあるのだと思い一瞬背中に寒気が走る場面もありました。


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