ライトノベルのような娯楽小説において、登場人物の心情をどのように描くかというのはなかなか難しいテーマだと思います。
説明するのは難しいのですが、ライトノベルは基本的に登場人物の心情を仔細に書くことを良しとしません。もちろん古い時代の、まだ一般小説と明確に分かたれていなかった時代の作品はそうでもなかったりするのですが、ライトノベルがライトノベルとして確立した以降は、登場人物の心情を細かく描くというのはあまり流行りではないように思います。そういえば、SF小説は人を描けていないと言われることもありました。

この作品はいかに人の心を描くかに気をつけている作品です。
1巻は主人公以外にはほとんど人が出てきませんが、だからこそでしょうか、主人公真島孝弘は自らの心について幾度も言及します。
彼自身が語らずとも、彼の眷属であるモンスターとのやりとりの形で描かれることもあります。
それは読む人によっては非常にくどく、しつこいようにも感じられるでしょうが、1990年代後半から2000年代にかけての「セカイ系」作品に抵抗の無い人であれば楽しめるでしょう。

注意点として、ライトノベルとしては強めの残酷描写、グロテスク描写があります。
個人的には大したことのない描写ですが、拒否反応が出てダメな人もいるかも知れません。

ストーリー進行は非常にゆっくりです。一般的なライトノベルやWeb小説に慣れている人からするとまどろっこしく感じるかもしれませんが、彼、彼女が、何を考え、何を感じているのかを細かく描写していくことを重視したスタイルですから、仕方がない面と言えるでしょう。
同時に「おれ」「わたし」といった一人称が頻出します。これは作品全体を通じて登場人物の誰かの一人称の視点で描かれるためで、一人称型の小説に慣れていない人からすると違和感があるかもしれません。