日本侠客伝 昇り龍 [DVD]
「日本侠客伝 花と龍」と原作を同じにしているが、先に原作に忠実な中村(萬屋 )錦之助主演「花と龍」2部作や「関の弥太っぺ」等傑作を遺した山下耕作監督が、今回は「仁義なき戦い」を書いた笠原和夫氏の脚本を得て、再び「花と龍」に挑んだ。名作「総長賭博」のコンビが健さんとタッグを組めば期待は高まって当然だ。俊藤プロデューサーの狙いも「総長賭博」を越える傑作誕生にあったのかも知れない。出演者も前回は若富が演じた吉田磯吉を御大片岡千恵蔵が演じる。さらに鶴田浩二、中村玉緒らが脇を固めた、スタッフ、俳優とも重厚な布陣だ。
マキノ監督の色艶のある華やかなタッチとは変わって、落ち着いた風格のある展開になっている。一流が揃って創り上げた作品だけあってシリーズ標準はクリアしている。錦之助、裕次郎、渡哲也。どの玉井金五郎とも違う健さんの玉井金五郎だ。
マキノ監督の色艶のある華やかなタッチとは変わって、落ち着いた風格のある展開になっている。一流が揃って創り上げた作品だけあってシリーズ標準はクリアしている。錦之助、裕次郎、渡哲也。どの玉井金五郎とも違う健さんの玉井金五郎だ。
土と兵隊・麦と兵隊 (新潮文庫)
従軍記者及び一兵隊として日中戦争に関わった作家の書。「土と兵隊」は一兵士として、弟に宛てた手紙形式。「麦と兵隊」は従軍記者のルポルタージュ形式である。
ベストセラーでありながら、戦後は戦争礼賛の書として批判を浴びる。社会の流れとしてやむを得ない変化だが、本人の心中はいかばかりか。
とにかく描写が仔細にわたる。泥まみれ・埃まみれの兵士。死を恐れぬ心情(マインドコントロールなんて言葉は瓦解する)。飛び交う銃弾・砲弾の迫力。リアルな屍体描写。敵・中国兵への憎しみと民族的親近感。果てしない行軍。食欲や睡眠への思い。
確かに「皇軍」である前提はぶれていない。戦争に対して批判的な事は少しも書いてない。拡大解釈すれば批判に思える部分もあるが、素直な人間的な気持ちの発現に基づくからだろう。逆に戦争を少しも美化していない。褒め称えてなどいない。但し、兵士の行動や性根は賞賛している。それも素直な思いゆえだ。
戦争の愚かさを知るには、経験者の体験を知る事が一番だ。頭で考えても真実には至らない。グローバルな視点とか国の事情とか富国の為とかいう理論は、一人の屍体の前では口を噤む。戦争に巻き込まれた人間を、ありのままに描く事は、それだけで「反戦の書」だ。
ベストセラーでありながら、戦後は戦争礼賛の書として批判を浴びる。社会の流れとしてやむを得ない変化だが、本人の心中はいかばかりか。
とにかく描写が仔細にわたる。泥まみれ・埃まみれの兵士。死を恐れぬ心情(マインドコントロールなんて言葉は瓦解する)。飛び交う銃弾・砲弾の迫力。リアルな屍体描写。敵・中国兵への憎しみと民族的親近感。果てしない行軍。食欲や睡眠への思い。
確かに「皇軍」である前提はぶれていない。戦争に対して批判的な事は少しも書いてない。拡大解釈すれば批判に思える部分もあるが、素直な人間的な気持ちの発現に基づくからだろう。逆に戦争を少しも美化していない。褒め称えてなどいない。但し、兵士の行動や性根は賞賛している。それも素直な思いゆえだ。
戦争の愚かさを知るには、経験者の体験を知る事が一番だ。頭で考えても真実には至らない。グローバルな視点とか国の事情とか富国の為とかいう理論は、一人の屍体の前では口を噤む。戦争に巻き込まれた人間を、ありのままに描く事は、それだけで「反戦の書」だ。
緋牡丹博徒 二代目襲名 [DVD]
本作は藤純子が主演を張った女任侠物「緋牡丹博徒」シリーズの第4作目に当たるわけだが、本作での藤純子は彼女の女優としてのピークであったかと思える。緋牡丹お竜という役どころを、もう完全に自分のものにしており、しっくりくる美しさと強さを兼ね備えている女となっているのだ。こんな女優をメインにして映画を作ったら、どんな映画でも面白くなるのではというオーラがビンビンと伝わってくるのである。
ということで、本作もやっぱり面白い映画になっているわけだが、なかなか出て来ない高倉健は、まさに高倉健であるという男を演じて、藤純子の適切なサポート役に回るが、藤純子とのロマンスがほとんど無いのが不満と言えば不満である。不満と言えば、健さんの妹役の雪江がちょっと気といえば健さんの妹役である時美沙を演じた雪江が少し気になる。健さんの妹としては少し華が無さ過ぎるというか、何だかしっくり来ないのだ。半次と雪江のロマンスは、本作では重要な役割を占めているのだが、どうもこの2人が華がの欠けるのは気掛かりで、それが本作の最大の欠点かと思うわけである。
そして本シリーズに欠かせないのが、若山富三郎先生演じる熊沢虎吉であるが、本作で彼に変わって頑張るのは、元川船頭でスケベな貴族院議員になるはずの遠藤辰雄演じる銭丸金吉であり、もっともっと彼に頑張ってほしいと思った次第ではあるが、その一方で、まぁ、これくらいの出番で良かったかなとも思うわけだ。
矢野竜子の悲願は矢野組の再興だから、それを実現した本作でシリーズを終えても良かったわけだが、やはり、まだまだ彼女の魅力からしてシリーズを終えるのはもったいないと東映サイドが考えたかどうだかはわからないが(多分そうだろうが)、結局8作まで続くわけだが、ストーリーなどといった、そういうことを考えないで観た場合、なかなか楽しめる作品ではないだろうか。
ということで、本作もやっぱり面白い映画になっているわけだが、なかなか出て来ない高倉健は、まさに高倉健であるという男を演じて、藤純子の適切なサポート役に回るが、藤純子とのロマンスがほとんど無いのが不満と言えば不満である。不満と言えば、健さんの妹役の雪江がちょっと気といえば健さんの妹役である時美沙を演じた雪江が少し気になる。健さんの妹としては少し華が無さ過ぎるというか、何だかしっくり来ないのだ。半次と雪江のロマンスは、本作では重要な役割を占めているのだが、どうもこの2人が華がの欠けるのは気掛かりで、それが本作の最大の欠点かと思うわけである。
そして本シリーズに欠かせないのが、若山富三郎先生演じる熊沢虎吉であるが、本作で彼に変わって頑張るのは、元川船頭でスケベな貴族院議員になるはずの遠藤辰雄演じる銭丸金吉であり、もっともっと彼に頑張ってほしいと思った次第ではあるが、その一方で、まぁ、これくらいの出番で良かったかなとも思うわけだ。
矢野竜子の悲願は矢野組の再興だから、それを実現した本作でシリーズを終えても良かったわけだが、やはり、まだまだ彼女の魅力からしてシリーズを終えるのはもったいないと東映サイドが考えたかどうだかはわからないが(多分そうだろうが)、結局8作まで続くわけだが、ストーリーなどといった、そういうことを考えないで観た場合、なかなか楽しめる作品ではないだろうか。
花と龍〈上〉 (岩波現代文庫)
日本の港運業界の歴史を知る上でも貴重な小説である。
玉井金五郎とマン夫婦が荒々しい若松を舞台に力強く生きる躍動感がすばらしい。
命を賭けて仕事を取り権益を守りながら義理と人情に厚い昔気質の日本人を読取ることが出来る。
金銭欲に駆られた現代人が失ってしまった古き良き時代の日本人を知った。
玉井金五郎とマン夫婦が荒々しい若松を舞台に力強く生きる躍動感がすばらしい。
命を賭けて仕事を取り権益を守りながら義理と人情に厚い昔気質の日本人を読取ることが出来る。
金銭欲に駆られた現代人が失ってしまった古き良き時代の日本人を知った。