鱧の皮―他五篇 (岩波文庫 緑 113-1)
「鱧の皮」は上司小剣の代表作であると同時に大阪を
舞台とした小説の代表作といっても間違いない。
物語の舞台は道頓堀、現在とは趣を異にする五座の櫓
がひしめく芝居町であった頃の道頓堀。
鰻屋「讃岐屋」を切り盛りする一人娘のお文のもとに
東京に家出している夫の福造から手紙が届く。そこに
は金の無心といっしょに「鱧の皮を送って欲しい」と
記されている。
大阪人にはなじみのこの食材も東京にはない。望郷と
妻への未練と後悔の象徴として「鱧の皮」が使われて
いる。ちなみに現在もこの食材はミナミの有名蒲鉾店
で買うことができる。
女盛りで気丈夫に店を一人で預かるお文と,婿養子で
芝居の興行で一発当てようとして失敗を繰り返し借金
とともに家出する福造。そして舞台としての道頓堀、
坂町、法善寺、洒脱な文に描かれた人間の織りなす日
常と心理描写が短編のこの小説の中に活かされている。
真の都市小説と呼ぶにふさわしい作品である。
舞台とした小説の代表作といっても間違いない。
物語の舞台は道頓堀、現在とは趣を異にする五座の櫓
がひしめく芝居町であった頃の道頓堀。
鰻屋「讃岐屋」を切り盛りする一人娘のお文のもとに
東京に家出している夫の福造から手紙が届く。そこに
は金の無心といっしょに「鱧の皮を送って欲しい」と
記されている。
大阪人にはなじみのこの食材も東京にはない。望郷と
妻への未練と後悔の象徴として「鱧の皮」が使われて
いる。ちなみに現在もこの食材はミナミの有名蒲鉾店
で買うことができる。
女盛りで気丈夫に店を一人で預かるお文と,婿養子で
芝居の興行で一発当てようとして失敗を繰り返し借金
とともに家出する福造。そして舞台としての道頓堀、
坂町、法善寺、洒脱な文に描かれた人間の織りなす日
常と心理描写が短編のこの小説の中に活かされている。
真の都市小説と呼ぶにふさわしい作品である。