24時
サニーデイサービスの数あるアルバムの中でも「東京」とこの「24時」が双璧であると思います。
春という響きに何か感じるものがあれば「東京」夏であれば「24時」
強引なようですがそれぞれの季節の響きがピタリときます。
夏、少し熱気の冷めた黄昏。
湿度が高く蒸せかえるような夜。眠れない夜。
「ああ 太陽の季節 暑い夜 君はどこで 何をしてる」と唄う7.シルバースター。
曽我部恵一のセンチメンタリズムが、汗になってぼろぼろとこぼれ落ちるているかのようです。
春という響きに何か感じるものがあれば「東京」夏であれば「24時」
強引なようですがそれぞれの季節の響きがピタリときます。
夏、少し熱気の冷めた黄昏。
湿度が高く蒸せかえるような夜。眠れない夜。
「ああ 太陽の季節 暑い夜 君はどこで 何をしてる」と唄う7.シルバースター。
曽我部恵一のセンチメンタリズムが、汗になってぼろぼろとこぼれ落ちるているかのようです。
サニーデイ・サービス
本人たちも認める「バンドとしてのサニーデイサービス」の最盛期にリリースされた、四枚目にしてセルフタイトルの「牛盤」。
一曲目『Baby Blue』から、非常にラフでアコースティックな音の響き。この落ち着いたトーンがアルバム全体を支配していて、このアルバムならではの雰囲気を醸し出す。ビートルズやらニールヤングやらニックドレイク(『PINK MOON』!)といった昔のアーティストの枯れた味わいを器用に抽出し、表現したい雰囲気に見事に転化している。また、曲のタイトルやら歌詞の中やらにも先人からの気の利いた引用が見られる。ジャケットも『原始心母』だし。
曽我部のソングライティングは『東京』以降はずっとハイレベルであるが、このアルバムにおいてはシンプルで楽器の生々しい音が響きやすい曲をずらりと並べている。SSW的で多少地味ではあるが、非常にメロウで落ち着いた、味わい深い楽曲揃いである。また、これらの楽曲が並ぶことで作り出すアルバム一枚を通しての雰囲気も抜群。アルバム終盤で爽快なロックを二曲連発した後、『bye bye blackbird』でしっとりかつ壮大に締める頃には少し寂しくも快い味わいが残る。
ジャケットの牧場が象徴的だが、このアルバムは曽我部の全作品中でもとりわけ牧歌的な性質の強いものである。東京の地名は出て来ないし、街が出て来ない曲も多く、代わりにノスタルジックでうっすら叙情的な言葉が並ぶ。まるでどこか閑散とした風景を旅しているような、そのような寂しさと草の香りとメロウさがある。数ある曽我部作品中でもこうした切なくも綺麗な風景を想起させるサウンドとしてはこのアルバムと『MUGEN』が双頭だろう。
雰囲気作りと並んで、このアルバムのとりわけ心地良いところは、その演奏の妙にある。いなたさ全開の演奏の中でも、とりわけ日本のポップシーン史上でも類稀な弱々しさ(失礼!)を見せる丸山晴茂の、少しモタり気味でバタバタしたドラムが、間違いなくこのアルバムの演奏のグルーブの中心を形作っている。ヘタウマと呼ぶにはあまりに心地良いユルユルのタイム感がこのアルバムの牧歌的雰囲気に完全に合致しているという意味で、このアルバムはサニーデイというバンド独特のグルーブの完成を表している(これは同時にこれ以降のバンドのキャリアを苦しめることになるが)。
サニーデイのアルバムは『東京』から現在の最新作『本日は晴天なり』まで、どれも高品質でまたそれぞれの趣を有しているが、このアルバムの持つ「個性」はその中でもとりわけ特殊でそれ故に尊い。
一曲目『Baby Blue』から、非常にラフでアコースティックな音の響き。この落ち着いたトーンがアルバム全体を支配していて、このアルバムならではの雰囲気を醸し出す。ビートルズやらニールヤングやらニックドレイク(『PINK MOON』!)といった昔のアーティストの枯れた味わいを器用に抽出し、表現したい雰囲気に見事に転化している。また、曲のタイトルやら歌詞の中やらにも先人からの気の利いた引用が見られる。ジャケットも『原始心母』だし。
曽我部のソングライティングは『東京』以降はずっとハイレベルであるが、このアルバムにおいてはシンプルで楽器の生々しい音が響きやすい曲をずらりと並べている。SSW的で多少地味ではあるが、非常にメロウで落ち着いた、味わい深い楽曲揃いである。また、これらの楽曲が並ぶことで作り出すアルバム一枚を通しての雰囲気も抜群。アルバム終盤で爽快なロックを二曲連発した後、『bye bye blackbird』でしっとりかつ壮大に締める頃には少し寂しくも快い味わいが残る。
ジャケットの牧場が象徴的だが、このアルバムは曽我部の全作品中でもとりわけ牧歌的な性質の強いものである。東京の地名は出て来ないし、街が出て来ない曲も多く、代わりにノスタルジックでうっすら叙情的な言葉が並ぶ。まるでどこか閑散とした風景を旅しているような、そのような寂しさと草の香りとメロウさがある。数ある曽我部作品中でもこうした切なくも綺麗な風景を想起させるサウンドとしてはこのアルバムと『MUGEN』が双頭だろう。
雰囲気作りと並んで、このアルバムのとりわけ心地良いところは、その演奏の妙にある。いなたさ全開の演奏の中でも、とりわけ日本のポップシーン史上でも類稀な弱々しさ(失礼!)を見せる丸山晴茂の、少しモタり気味でバタバタしたドラムが、間違いなくこのアルバムの演奏のグルーブの中心を形作っている。ヘタウマと呼ぶにはあまりに心地良いユルユルのタイム感がこのアルバムの牧歌的雰囲気に完全に合致しているという意味で、このアルバムはサニーデイというバンド独特のグルーブの完成を表している(これは同時にこれ以降のバンドのキャリアを苦しめることになるが)。
サニーデイのアルバムは『東京』から現在の最新作『本日は晴天なり』まで、どれも高品質でまたそれぞれの趣を有しているが、このアルバムの持つ「個性」はその中でもとりわけ特殊でそれ故に尊い。