ガダルカナル (文春文庫 (115‐10))
作戦はあった、しかし兵站部門を無視し、兵士が腹の減る人間であり、相手にもそれ相応の戦略や兵器を伴っていることを無視した作戦だった。ガダルカナル島での戦闘は日本軍の戦略の無謀さをさらけ出したものだったと思う。軍参謀の机上の空論のために家族や恋人達と別れて「国のため」と意気込んで戦争に出て行った若者は満足な補給も無く戦闘ではなく、餓えの為、死んで行く。将来のある若者達が、無駄死していくこれほど無駄なことがあるだろうか?日本が起こした戦争の意味を改めて考えさせられる書だと思います。
人間の條件 DVD-BOX
五味川純平の『人間の条件』は、植民地の構造や(ありきたりの表現だが)軍隊の不条理、ラーゲリといったものを活写した、そして全篇を貫くメロドラマ的要素として梶と美千子の純愛が描かれた、まさに巻措く能わずという作品だった。映画化作品でそのイメージが損なわれるのが嫌だったのでこれまで観てこなかったが、今回初めて3部を通して観て圧倒された。美千子との生活のために「魂を売った」梶が、満州で人間らしく振る舞おうとすること自体に潜む矛盾。それを、まだ若かった仲代達矢が、後年の目ばかり剥く硬質な演技とは違って説得力を持って演じている。しかし脇役陣をみても、ロケシーンを観ても、これだけの長尺物でしかも質の高い映画を三年がかりで作っていたとは......日本映画が力を持っていた時代だったのだなあと熟々思わされた。もっと早く観るべきだったと後悔している。
戦争と人間 第一部 運命の序曲 [DVD]
「日活が総力を結集し誇りを持って世に問う」と謳った本作の本質は、娯楽超大作であることに尽きます。なにしろこれだけのオールスターキャスト。個々の迫真の演技がすばらしく、この激動する昭和史の物語を、3時間超にもかかわらず最後まで目が離せず、飽きさせないところが凄いではありませんか。そしてこの激動の昭和史における新興コンツェルン五代産業を軸にしつつも、第一部を貫くのは五代家長女浅丘ルリコと柘植陸軍中尉の高橋英樹の純愛物語。ブルジョアの屋敷にいきなり霧社事件の話しが出てきたと思うと、首狩の文化人類学的考察に恍惚を覚え萌える二人。さらにはその霧社事件における植民地政策に難癖をかました柘植中尉は金沢へ左遷、その地を尋ねる浅丘ルリコと遂に結ばれると思いきや、二人のベットの背景に突如現れる突撃する兵士の映像。とにかく一つ一つのエピソードにも手抜きが無く、あの中村大尉事件の出発前の写真撮影現場の忠実な再現まで現れます。そして「奉勅命令」という言葉がこの1部では重要な重みをもって駆け巡ります。いきなり関東軍司令官に浅丘ルリコに任命された柘植中尉は、ご丁寧に自己申告しながら、奉勅命令なく如何に対処すべきかを設問されるやり取りで、テーブルに置かれたティーカップの湯気に異常な熱気を感じるものです。五代産業技師の二谷英明と浅丘ルリコの禁断の情事を思わせるやり取り、地井武男の今日では考えられないような怪演。そしてなにより当主役の滝沢修の冷静沈着な演技と、対照的な芦田伸介の軍人と対等にやり取りする迫力。とにかく見せ場の多いまったく飽きさせない娯楽作品です。
人間の條件〈上〉 (岩波現代文庫)
戦争は暴力や殺人を合法化する。その中で、人間が人間であることを全うしようとすれば何が起こるのか、人間であるためにはどう生きなければならないか、人間として生きることは可能なのであろうか、人間として生きられなかった時はどうなるのであろうか・・・。作者は、中国東北部における戦争末期を舞台に人間の条件をひたすら追求する。
私は、本年、中国東北部を訪問するにあたって本書を再読した。いくつかの点で、1960年代、最初に読んだときとまた違った印象を受けた。最初は6巻で配本されたが、今回は2巻ごとまとめて上中下3巻となった。各巻ごと、もっとも強く感じた点を一言ずつ記すこととする。
まず上巻:このような時代、人間が全うに生きる力をどこに求め得るのか。作者は、その最たるものとして愛する人を挙げる。しかし、主人公が良心に忠実に生きるためにそれは必要であったけれど十分ではなかった。何がさらに必要とされたのであろうか。それは、鉱山における中国人特殊工人たちとの関係を中心に展開される本巻において、中国人のリーダーを通じ示唆されている。しかし、作者はそれ以上には明言しない。中国人は、それ以後の歴史においてそれを実践するが、日本人は成功裏に経験すること少なく現在に至っている。作者が明示的に書けなかった所以であろう。
私は、本年、中国東北部を訪問するにあたって本書を再読した。いくつかの点で、1960年代、最初に読んだときとまた違った印象を受けた。最初は6巻で配本されたが、今回は2巻ごとまとめて上中下3巻となった。各巻ごと、もっとも強く感じた点を一言ずつ記すこととする。
まず上巻:このような時代、人間が全うに生きる力をどこに求め得るのか。作者は、その最たるものとして愛する人を挙げる。しかし、主人公が良心に忠実に生きるためにそれは必要であったけれど十分ではなかった。何がさらに必要とされたのであろうか。それは、鉱山における中国人特殊工人たちとの関係を中心に展開される本巻において、中国人のリーダーを通じ示唆されている。しかし、作者はそれ以上には明言しない。中国人は、それ以後の歴史においてそれを実践するが、日本人は成功裏に経験すること少なく現在に至っている。作者が明示的に書けなかった所以であろう。
戦争と人間 第二部 愛と悲しみの山河 [DVD]
山本監督は戦前は「母の曲」といった女性映画を多く手がけていた。成瀬巳喜男監督の弟子でもあった。戦後の作品群とは全く違うメロドラマが多く並んでいる。しかし、そういう積み重ねがあって、ここでの戦争下での恋人たちの苦悩も描けてのだと思う。
私の好みからすると、やはり話の軸の一つ、伍代由介・喬介の兄弟がどういう行動するかというところをもっと出して欲しかったと思う。でも要所要所に登場して、話を締めている。
私の好みからすると、やはり話の軸の一つ、伍代由介・喬介の兄弟がどういう行動するかというところをもっと出して欲しかったと思う。でも要所要所に登場して、話を締めている。