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ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

ポール・トーマス・アンダーソン
おすすめ度:★★★★★
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人間模様を描く傑作
おすすめ度 ★★★★★



主人公のまわりの環境や状況が移り変わるたび、徐々に変化する内面・自我がしだいに表面化していく演出は素晴らしく、またそれを演じきる役者がまた凄かった。そこを中心に周りの人間達が蠢き翻弄されていく様が丁寧に画かれており、人間模様を描いた傑作といえるのではないでしょうか。劇場で観終わった後、数日は腹の中にこの映画の何かが残っていました。ストーリーのスケールを考えると時間は短く感じられます。

オープニングシーンので「2001年宇宙の旅」をラストの部屋で「シャイニング」を思い起こす自分がいました。ポール・トーマス・アンダーソン監督について、ロバート・アルトマン監督が引き合いに出されますが、この映画に関してはスタンリー・キューブリックを連想しました。各シーンの絵のキマリ方(「バリーリンドン」とか)、ストーリー展開などで端々に感じます。



カエルの雨あられのほうがいい
おすすめ度 ★★★★☆

一人になりたいと言い続けただけの男の話。PTA渾身の大傑作、石油王の一代記と言われているが、石油王プレインビューの、石油のためにあらゆるモラルをかなぐり捨てるような業の深さが描かれているわけではない。本当に交渉のために「息子」を利用する冷血漢であれば、聴力を失った後のほうが利用価値は高いはずだが治療と教育を優先し、「弟」とは実利を超えて一時的に家族経営の体制を作ろうとした。それでも「息子」「弟」と擬似家族の絆を結ぶことを避け、やはり一人になる。
福音派の牧師と対峙し、信仰と実利、神と石油との戦いと葛藤を描くわけでもない。PTAがアメリカと映画の歴史に払う敬意は清清しいが、情緒不安定でもプリンの懸賞を集めて世界一周をするような屈折したアメリカ人を描いて欲しいし、石油の炎柱よりも蛙の雨を見たい。
敢えて言えば"Bastard"と「息子」へ独り言のようにつぶやくシーンが美しい。家族だけは手に入らなかった自分の人生を呪うわけでもなく、目の前の息子をとにかく罵る凄みは、ようやく終盤でプレインビューの造形に深みを増した。



パワーで押しまくる!!
おすすめ度 ★★★★★

まず冒頭、ひとりきりで坑道に潜り、発掘している場面だけでも驚異的に惹きつけられる。続く、初めて油井を掘り下げる場面での穏やかだが重々しい表情、そして油田候補地買収交渉の場での貫禄のある佇まいと、巧みに連携していく編集によって畳みかけるように描かれるダニエルの変遷の異様なまでの力強さに、瞬く間に呑みこまれてしまう。

どことなく前時代の古典映画の趣があり、大掛かりな石油採掘機が炎上する場面やら、噴き出した石油に火がつき、それが黒々と大空を覆うシーンやら、お金もかかっています。
それぞれの映像美も出色。荒涼とした土地で行われる石油の掘鑿と、そこで繰り広げられるドロドロとした人間模様が美しいはずはないのだが、構図と特徴的な色彩設計によって、息を呑むような美しさを演出しています。本編はアカデミー賞において主演男優賞の他に撮影賞を獲得しましたが、それも納得ですね。
 
それにしても、すさまじい。主人公ダニエル・プレインヴューが通れば草ひとつ生えず石油と血が流れる...。宗教観とか倫理観なんてクソくらえってくらいのパワーで、徹底的に一人の男だけを描いています。
また、全編を通じて描かれるのは、主人公と、彼をよそ者として疎ましく思う牧師イーライとの、土地と引き換えに要求された教会への献金の5000ドルを巡る攻防です。
主人公に対して終始反感を示し、取り入って自らの欲望をも満たそうとする伝道師イーライを演じたポール・ダノもまた好演でした。

全体のストーリーテリングは、決して上手くはありません。ワンシーン、ワンシーンが切れ切れに感じられる部分もありました。実際には、心理的な伏線が巧みに張らているのですが、インパクトの凄まじい場面があまりに多いために、ガタガタした印象を受けてしまう。反面、その凄まじいパワーで2時間40分を押し切り、上映時間を長いと感じさせないというのもあります。



PTA最新作
おすすめ度 ★★★★☆

ポールトーマスアンダーソンの新作。
現代の世界石油高騰や日本のガソリン高騰を時には厳しく、ユーモアに皮肉を込めた作品です。
Idrinkyourmilkshake
というセリフがyoutube等で流行りました。 あと音楽もオススメで 『レディオヘッド』のジョニーグリーンウッドが作っています。



ディ・ルイスが出なければ、今作は作らなかった。
おすすめ度 ★★★★★

と、ポール・トーマス・アンダーソンはインタビューで答えている。そして、監督にそう言わしめさせたダニエル・ディ・ルイスが、極めて特異なキャラクターを、全編鬼気迫る演技で見せる。正にロンドンの芸術一家に生まれ、シェークスピア劇団出身で、貴族的風貌と才覚を持ち合わせながら、どんな役にも同化できるカメレオン俳優の異名に相応しい名演ぶり。一時俳優を廃業し、イタリアで靴職人をやっていたと聞いたが、やっぱり凄い俳優だ。
ディ・ルイスが演じる主人公は、“黒いゴールド・ラッシュ”でアメリカが湧き返っていた時代に、油田を掘って、掘って、掘りまくる。そして、巨万の富を得た後も、決して立ち止まる事をしない。
正に狡猾にして強欲、“アメリカン・ドリーム”と“宗教”というアメリカのシンボリックな“魂”を蹂躙し、その欺瞞性を嘲笑する。その強靭さと毒気にあてられ、もうひとりの興味深い登場人物であるポール・ダノの存在感が霞んでしまった。こちらも、屈折した小心の偽善者を演じて中々の名演だったが、相手が悪かった。ダノについては、DVDで再度確認したい。
主人公のどす黒く空虚な心象を具現化したかのような暗鬱で漆黒な黒煙立ち上る夕闇、一方で開拓時代の名残りの様な叙情的で美しい絵画の如きカメラ。そして、反社会的でグロテスクな人物の一生を描きながら、観る者の関心を一時も逸らさせず、大河ドラマを構築させた映像力が魅力だ。


概要
6年ぶりの映画出演で、アカデミー賞主演男優賞をあっさりと受賞したことから察するとおり、ダニエル・デイ=ルイスのハイテンション演技に最後の最後まで引き込まれる力作。彼が演じるのは、役名も同じダニエルで、油田を掘り当てることに夢中になり、富と権力を得ながらも破滅的な人生を送ってしまう男だ。俳優ならば誰もが演じてみたいであろう強烈な役どころ。人間とは思えない残酷さ、卑劣さをちらつかせながら、何かにとりつかれたような欲望と狂気で、2時間38分、緊張感を途切れさせないのは、やはりデイ=ルイスの名演あってこそだろう。
 ポール・トーマス・アンダーソン監督の冴えわたる演出は、石油が噴出するシーンで一目瞭然。天に向かって上がる黒い液体とともに、燃える炎、そこに向かって走るダニエルに、レディオヘッドのジョニー・グリーンウッドによる重低音の音楽も相まって、映画的興奮をかき立てる。デイ=ルイスに負けない存在感を発揮するのが、主人公に対し、つねに反発するカリスマ的な宗教家イーライを演じたポール・ダノ(その兄も含めて2役)。人々を扇動する演説ぶりには鬼気迫るものがあり、ダニエルとイーライが長年の落とし前をつけるラストは、稀にみる衝撃度だ。(斉藤博昭)

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